「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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外資系証券なるもの (14) 「ライアーズ・ポーカー」 

外資系証券なるもの (14) 「ライアーズ・ポーカー」

今年のオスカー作品賞にノミネートされたマーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』は、1990年後半を時代背景としてウォール・ストリートの破天荒さを描いていましたが、業界全体の勢いとしてはブラックマンデーで一頓挫するまでの80年代の方がはるかにありました。

栄華を極めた80年代のウォール・ストリートを知るには、1989年に出版されたマイケル・ルイスが著した『ライアーズ・ポーカー』は必須です。

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マイケル・ルイスといえば、最近、彼の著作『マネーボール』がブラッド・ピットを主演に映画化されたことで知る人も多いかもしれません。『ライアーズ・ポーカー』は、マイケル・ルイスの処女作で、私も14年間在籍したソロモン・ブラザーズ証券での彼の実体験を基に、ウォール・ストリートの内幕を実名入りで書いた作品です。

日本人の中では間違いなく私が、この本の内容を一番実感をもって楽しめる人間だと思います。なぜならマイケル・ルイスはソロモン・ブラザーズ証券在籍時には、私も所属していたモーゲージ・デスク(彼はセールス、私はトレーダー)に所属しており、登場人物の全員が、私のよく知っている人物ばかりだからです。

私が、この本の出版直後にニューヨーク出張に行った時は、ニューヨーク・オフィスのみんなが「あの本読んだか?」と話し合っていたことを覚えています。その当時、私はまだまだ駆け出しで、その本に書かれている、まだ物にならないひよっこトレーダーを指す「海底の奥底に沈むクジラのクソよりも下の存在(lower than whale shit on the bottom of the ocean)」とはまさに自分のことだと思ったものです。

この本のタイトルにもなったUSドル札を使ったゲーム(注1)は、トレーダー達がよくトレーディング・フロアでやっていたもので、当時、ウォール・ストリートで一種の流行りでした。がつがつ仕事をする傍ら、ちょっとした合間に知的なゲームを楽しむ感覚がウォール・ストリートっぽいと感じられたのでしょう。

ソロモン・ブラザーズ証券では世界中の新入社員をNYに一堂に集めて、約4ヵ月間のトレーニング・プログラムを毎年開催していますが、私も入社直後にそのトレーニング・プログラムに参加しました。私を含め、そのトレーニング・プログラムの研修生も、いっぱしのインベストメント・バンカーを気取って、授業の合間の休み時間にこのゲームをよくやったものです。

『ライアーズ・ポーカー』の書き出しの章では、ソロモン・ブラザーズ証券のジョン・グッドフレンド会長(注2)が、プロプライエタリー・トレーディング(会社の資本を投資して売買する自己勘定取引)デスクのヘッドのジョン・メリウェザー(注3)に、一手100万ドル(当時の為替レートで約1億4000万円)で勝負を挑む話が紹介されています。勝って上司の機嫌を損ねても、負けて100万ドル失っても、いずれにしても得るところのないジョン・メリウェザーは

「だめだね。どうせ差しでやるなら、本物の金額でやろう。1千万ドル、泣き言なしだ」

と答えたといいます。その後『ライアーズ・ポーカー』ではこう続きます。

「頭がおかしいぞ、きみは」グッドフレンドは勝負をおりた。とんでもない、とメリウェザーは胸の中でつぶやいた。あんたよりずっと頭がいいだけさ。

いかにも、当時のソロモン・ブラザーズ証券を象徴するかのような逸話です。

(注1)
ルールは英語版Wikipediaに詳しい。プレイヤーは各自USドル札1枚を手にし、全てのプレイヤーの通し番号の中の「数字」あるいは「個数」を「ビッドアップ(競り上げる)」していくゲーム。

英語版Wikipediaに解説されているように、勝率は確率計算されるが、勝負の駆け引きはそれよりもブラフによるところが大きく、それがトレーダー達が好んで興じた理由である。

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(注2)
ソロモン・ブラザーズ証券がウォール・ストリートの覇者であった当時のCEO。1985年には雑誌『ビジネス・ウィーク』の表紙を飾り、”King of Wall Street”と称された。1991年にトレジャリー入札スキャンダルにより引責辞任。

john gutfreund

(注3)
トレーダーの職種は、商品の値決めと在庫の管理だが、それにも二種類あり、対顧客の取引を執行するカスタマー・トレーディングと、自己勘定取引をするプロプラエタリー・トレーディングがある。給与体系も全く異なり、前者はいわゆるサラリーマンだが、後者は完全歩合制。社内では、プロプラエタリ―・トレーダーは会社のいかなるリソースも活用できる不文律がある。拙著『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』に登場するアンディー・フィッシャーはプロプラエタリ―・トレーダー。

ジョン・メリウェザーはソロモン・ブラザーズ証券でも最も成功したプロプラエタリ―・トレーダーだったが、1991年のスキャンダル時に副会長でもあり、ジョン・グッドフレンドと共に引責辞任。その後、マイロン・ショールズ、ロバート・マートンという2人のノーベル経済学賞学者を擁するヘッジファンド「LTCM(Long Term Capital Management)」を設立。設立当初は年率40%を越える驚異的なリターンを叩きだしたが、1998年のロシア危機により破綻。

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category: 外資系証券なるもの

2014/07/07 Mon. 04:58 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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