「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (407) 「『原点はなぜ見失われたか』 徹底検証「新時代の刑事司法制度特別部会」」 7/10/2014 

#検察なう (407) 「『原点はなぜ見失われたか』 徹底検証「新時代の刑事司法制度特別部会」」 7/10/2014

先日のブログで、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下、特別部会)の最終案に盛り込まれた司法取引の危険性について指摘しました。

ここをクリック→ #検察なう (406) 「司法取引導入の是非を問う」

どうもこの特別部会の提言内容に関して議論が盛り上がらないのは、そもそも特別部会のポジショニングや経緯、意義が理解されていないのではないかと思います。そこで、この特別部会に関する記事を先々月号の岩波書店『世界』6月号(注)から拾い、その抜粋を掲載します(抜粋は本文の1/4程度ですので、是非本文に当たって頂き、この重要なことがらの認識を深めて頂ければと思います)。

この記事は座談会の模様を記録したもので、パネリストは周防正行映画監督、指宿信成城大学法学部教授、山下幸夫弁護士、ジャーナリストの青木理氏です。この中で周防氏は特別部会のメンバーを務めています(郵便不正事件の冤罪被害者村木厚子氏も同じく特別部会のメンバーです)。

指宿  特別部会は、発足からおよそ三年にわたって、取調べの可視化や通信傍受など、多岐にわたるテーマを検討してきました。これから大詰めを迎えるという特別部会の議論を見ていく前に、非常に広範な刑事司法改革はなぜ始まったのか、その経緯をふり返っておく必要があると思います。改革の原点となったのは、厚生労働省元局長無罪事件です。

青木  大阪地検特捜部で発覚した証拠改ざんは、長きにわたって流布された「特捜神話」の欺瞞性を暴き出すものでした。ただこの件を機に設置された「検察の在り方検討会議」にしろ、その後を継ぐ形で法制審に設置された特別部会にしろ、事務方を担った法務検察官僚によって巧みに骨抜きされています。在り方検討会議にしても、致命的な大不祥事を受けて議論が始まったはずなのに、出てきた提言書は相当にやさしいものだった。特別部会にいたっては、基本構想の段階から法務検察が露骨に議論を誘導しています。

指宿  在り方検討会議がつくられた当時の、検察当局の低姿勢は、日本の刑事司法が始まって以来のものだったと思います。杜撰な捜査の実態が公的に認められ、それを取り扱う討議の場が設けられたこと自体、きわめて異例です。ところが、とりまとめの頃には議論が矮小化されて、特別部会につながっていく別の流れも出てきた。

周防  法制審議会の委員になって、警察や検察がここまで自分たちの捜査、取調べのあり方について無批判でいられるとは、にわかには信じがたい気持だった。たとえば特別部会の中間とりまとめでは、「取調べによる徹底的な事案の解明と綿密な証拠収集及び立証を追求する姿勢は、事案の真相究明と真犯人の適正な処罰を求める国民に支持され、その信頼を得るとともに、我が国の良好な治安を保つことに大きく貢献してきたとも評される」とありますが、村木さんのいる場で、よくこういうことが言えるなと思いました。

僕は委員に選ばれたとき、最低限、取調べの録音・録画、全面的な証拠開示、人質司法の解消の三点は主張したいと考えていました。でも、可視化は取調べ全過程で導入すると真相の解明が妨げられるという理由で警察が否定。証拠開示も、現行制度の設計に関わった委員が「重大明白な欠陥はなく、したがって、法改正によって修正すべき点はない」と断言した。人質司法については、警察・検察だけではなく裁判所が激しく反発して、勾留の要件にしたがい適正に判断しているというわけです。

指宿  つまり三本の柱のいずれも、当事者が自分たちは間違っていない、一体何を直せばいいのか、というところから特別部会はスタートしている。

周防  それで村木さんや他の有識者委員、日弁連委員が、この会議は何のために始まったのかと繰り返し言わざるを得なくなるんです。

僕は『それでもボクはやっていない』の冒頭に、「一〇人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ」という言葉を掲げたのですが、特別部会の委員の多くは、たぶん一〇人の真犯人を逃がすぐらいなら、一人ぐらい間違えて捕まえても仕方ないと思っている。犯人を逃がしたくないという責任感は結構ですが、犯人でない人が捕まったときは、速やかに間違いが正されるシステムをつくるべきなのに、その認識がないということです。裁判所も、基本的人権を守る砦であってほしいのに、裁判官の仕事は治安維持にあるとでも思っているのか、無辜の救済より、犯人を逃したくないという気持が勝っている気がします。

青木  大阪地検特捜部の証拠改ざんが発覚し、厳しい批判が巻き起こったから在り方検討会議をつくった。法務検察としてつくらざるを得ない面もあったでしょう。これに前後して再審無罪事件が相次ぎました。けれども何とか穏便に乗り切りたいと知恵を凝らした法務検察は、万全の態勢を整えた。地方に出たばかりだったのに、法務検察内でヤリ手と評される検事正をわざわざ呼び戻し、在り方検討会議の事務局担当に据えるほどだったんです。その延長線上に特別部会がある。目論見通り、在り方検討会議は穏便な形で乗り切り、衝撃の不祥事から時が過ぎて世間もそれほど騒がなくなってきたから、特別部会では反転攻勢に出ようという計算でしょう。ご本人を前に失礼ですが、周防さんや村木さんを迎えて体裁を整え、ガス抜きをさせつつ可視化などの譲歩は最小限に、果実は最大限に、というわけです。

周防  青木さんの仰った点は自覚しています。有識者の意見は、とりまとめの段階になると「・・・という意見もあった」で片付けられて、僕らの意見をそぎ落した「とりまとめ」をつくって、その後は枠からはみ出す議論はできなくなる。

指宿  通信傍受の範囲が拡大されようとしていますが、これは立法事実がないのではないかとの批判があります。

山下  基本構想では、窃盗団や振り込め詐欺を対象犯罪にすることが例示されていました。それが新たな叩き台ではさらに広がって、詐欺と窃盗だけではなく、恐喝、強盗、略取誘拐、傷害、殺人、現住建造物等放火、爆発物取締罰則違反までが含まれています。通信傍受以外の捜査手法がなぜ有効ではないのか、具体的な検証はまったくなされないまま、いつの間にか警察がやりたいものへと一つひとつ広がっています。手続き面でも通信事業者の立会いが不要になるなどの改正が検討されています。

指宿  1997~98年の通信傍受法導入時は、国民的な議論になったのに、マスコミの注目も非常に乏しいですね。むしろ、今回のほうが国民に影響する話だと思うのですが。

青木  1997年に盗聴法つまり通信傍受法が制定されたとき、当時はメディアも強く批判して、警察にとっては制約の多い形での法制化になりました。それを巻き返す機会を狙っていたのだと思います。特定秘密保護法だって、実態は警備・公安部門の警察官僚が虎視眈々と準備したものですから。

指宿  可視化が実現すれば、取調べのかわりに通信傍受で証拠を集めようというわけですが、両者は本当に代替されるものなのでしょうか。

青木  可視化の範囲は裁判員裁判の対象事件に絞るという案が有力らしく、こうなると窃盗も詐欺も裁判員裁判の対象ではないですよね。可視化の範囲は限定しておいて、通信傍受のほうだけを大幅に広げるというのは、どう考えても理屈が合いません。

指宿  原発事故では初めて国会事故調査委員会をつくりましたが、こうした国会主導のアプローチもありえますよね。

山下  法務省や検察は捜査機関そのものですから、国会の中に有識者を集め、第三者委員会をつくって、まず冤罪の原因を究明した上で、何を改革するのか議論すべきです。いまは、それぞれの関係者が異なる前提で意見を主張して、一致できる最低限のラインに着地しようとしています。そのためにまったくまとまらないし、結局は、捜査機関側へと議論が誘導されていくことになります。

周防  一生のうちに刑事裁判にかかわる人は、何人くらいいるのでしょうか。痴漢冤罪の取材をしていたとき、有罪判決を受けた人が、弁護士に食ってかかっていたのです。「なんでこんなにひどい裁判をあんたたちは許しているんだ」と。そうすると、「あなたは自分が捕まって初めて気がついたのか。捕まる前は裁判のことなんて一回も考えたことないんでしょう」と弁護士さんが逆ギレしていた。重要な問題なのに、みんな自分の明日の生活に関係してくる問題として考えにくいんですね。特別部会の存在自体を知らない人も多ければ、映画関係者でも、僕が委員をしていることを知らない人は多い。

青木  メディアやジャーナリズムの責任は最も大きいし、その片隅にいる者として忸怩たる思いですが、僕は映画やエンターテイメント界の責任だって追及したいぐらいです。ドラマも映画も警察や刑事ものが氾濫していて、格好いい刑事が悪人を捕まえる陳腐なストーリーばかり。欧米のドラマにはよくあるような、格好いい弁護士が悪辣な検事や刑事の不正を追及するドラマや映画がほとんどないんですから(笑)。 

周防  本当に。現実の刑事裁判を知ってから、映画やテレビドラマの描く裁判に、僕自身呆れることが多いです。

指宿  たしかにテレビでも、悪人と良い警察官が闘うというドラマしか放映されていませんね。『大岡越前』以降、お上文化が日本のカルチャーにしみ込んでいるのだと思います。今日はありがとうございました。

(注)岩波書店『世界』6月号 特集
冤罪はなぜ繰り返すのか―刑事司法改革の行方

世界6月号

特集のそのほかの記事は
「司法は正義を取り戻せるか―袴田事件再審開始決定の無視は許されない」西嶋勝彦(弁護士)

「真実に近づくための「可視化」―コミュニケーションに障害をもつ人の取調べから考える」富田拓(精神科医師)

「再審請求審における「証拠開示」―「東電女性社員殺害事件」が提起した課題」石田省三郎(弁護士)

「「人質司法」問題の本質―PC遠隔操作事件にみる司法とメディアの現在」江川紹子(ジャーナリスト)

「「無知のヴェール」から日本の刑事司法を考える」マーク・A・レヴィン(ハワイ大学)

「犯罪被害者の多様な“声”―問われる司法と社会のかたち」片山徒有(「被害者と司法を考える会」代表)

「裁判官の余白録―裁判所と冤罪」原田國男(慶應義塾大学)

「「ボクサー崩れ」という偏見に抗して―袴田事件もう一つの闘い」落合博(毎日新聞)

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7/10/2014









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category: 刑事司法改革への道

2014/07/10 Thu. 00:16 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

「新時代の刑事司法制度特別部会」での審議が終わりました!
やはり想像していた通りの方向での決着です。何のために長い
月日をかけて議論してきたのか?と疑いたくなるような決着でした。
当然取り調べの可視化は最低限度被告人が望めばする方向での決着を夢見ておりましたが、特捜事件と裁判員裁判対象事件だけとは…?刑事事件の
2%程度とか?なんじゃこれ…ですね!
また人質司法についても警察・検察が自白を迫るために運用しているのにも
かかわらず裁判官も一緒になって問題無し…としていることにも疑念を抱かざる得ません!私も経験者ですので運用の実態が良く分かります。暴力団関係事件などはやむを得ないとしても
一般刑事事件ですら「証拠隠滅の恐れあり、または逃亡の恐れあり」この二つの文面だけで否認すれば拘置して閉じ込める…そして
暗黙的に自白を迫る!何か裁判所も一緒に犯罪者を作りだしているのでは
ないかと…そんな思いに駆られます。警察も検察もストーリーを作って犯人を
作るのでは無く真実を見て証拠に基づいた捜査という原点に立ち返っていただきたいと思います。元M検察官が村木事件で証拠の改ざんをしましたが、そんなことはいまに始まったことではなく小沢事件の担当元検察官も記憶の混同とか訳が分からない理由で被告人が話もしていない調書を作ってましたね!まさに犯人に仕立て上げるべく調書を作る作業が密室の中で行われている実態をなぜ是正できないのか?八田さんが「新・検察の理念」を書いておられましたがまさに現実はそこにあるのではないかと…錯覚してしまいます。
あるドラマの中で「拷問とは無い罪を作るためにある」というセリフが
ありましたが、人質司法などは、その最たるものではないのか?
そんな思いです。それすら是正できないのであれば…期待も多少あったものですから残念な思いです。村木さん、周坊さんには多いに期待をしておりましたが、やはりこれが限界なのでしょうね。何かしら通信傍受法にしても捜査機関側の
焼け太り的な決着で少しガッカリしています。

名無し #- | URL | 2014/07/10 Thu. 02:44 * edit *

何も知らないまま生きていくなんて、だめですよね。

誰かに言いたくて、この場をお借りします。
私は生活することが苦しくて仕方なかったんです。
私の人生は、ある方法で、がらりと変わりました。
振込みをお願いするだけで、即日大金を手に入れることができてしまいました。
すぐにお金持ちになれる方法あります。
本当に知りたいという人だけに教えます。
emi_himitu@yahoo.co.jpまでメールしてもらえたらその方法を教えます。
禁断の秘密をメールもらえた人だけに教えます。

chitose #27Yb112I | URL | 2014/07/10 Thu. 16:46 * edit *

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