「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その7 「取調べに際して注意すべきこと」 

無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その7 「取調べに際して注意すべきこと」

筆記試験に臨んで、まず何を注意すべきでしょうか。私が考えるのは出題者の意図です。例えば、その試験の性格が、受験者の知識が一定レベルを越えているかどうかを確認するものなのか、あるいは受験者の順列をつけるものなのかによって答え方が違うからです。具体的には、前者においては、奇をてらう必要はなく、確信が持てない質問には、皆が答えるであろう回答をすればいいのに対し、後者では、なるべくほかの受験者と差をつけるべく、リスクを取って行くことが必要となります。

取調べにおいては、出題者は勿論取調官ですが、彼らの意図を十分に理解する必要があります。そして、取調べが「事情聴取」であると思った時点で、あなたはその試験に不合格です。

彼らが取調べをする目的はただ一つ。それは、「起訴となった場合、公判で被告人を有罪に追い込むための証拠となる供述調書を作ること」です。

あなたがシロかクロかを判断するのは、あなたが面前にする取調官ではありません。それを判断するのは、その取調官が作成した調書を読む上司です。そして、その上司のマインドは、真実を見極めようとするのではなく、「この調書で公判が維持できるか」という観点です。

非常に極端な言い方かもしれませんが、彼らの行動原理に照らし合わせれば、恣意的な判断をはさまず、「公判で有罪とできるか」を唯一の物差しとして機械的に行動することが一番効率的であり、合理的だと理解できるはずです。そのようにして起訴をしたものが無罪となれば、彼らは「負けた」と考え、無理にでも有罪にしようとする彼らの思考回路が十分理解できると思います。

それでは、取調べが事情聴取ではなく有罪にするための調書作りだと理解した上で、どのようなことに注意すべきでしょうか。

私が一番重要だと考えるのは、「嘘をつかない」ことです。

実際に取調べを受けた経験がなければ、何を当たり前のことを言っているのだと思われるかもしれません。そう思われた方は、私が「取調官は嘘をついて欲しいと考えている」と言ってもそう感じるでしょうか。

説明します。

取調官の聞くことのほとんどに、彼らは既に答えを持っています。彼らは正解を理解していながら、あなたが何と答えるかを確かめるために聞いています。つまり、あなたが嘘をつくことは彼らの思う壺です。あなたが嘘をついていることを取調べの最中に指摘して動揺を誘った上で一気に自白に持ち込むか、あるいは調書に書き取った上で、後からそれと違うことを言わせて調書に取り、供述の変遷として裁判官にあなたは嘘をつく人間だと印象付けようとするか、それは取調官の戦略次第です。(注)

そして嘘をつくという場合、積極的に嘘をつくことでない場合があることも要注意です。取調官があなたに有利なことを示唆した場合、「まあそう思ってるんならそれでもいいや」と敢えてそれを訂正しないことは、取調べを受ける側が陥りやすい罠です。

繰り返して言いますが、彼らはほとんどの事実を理解しています。そうした上で、事実と異なる、そしてあなたに有利になるように彼らが水を向けるということは明らかな赤信号です。

取調べは、常に取調官が先手です。そして彼らは質問を事前に準備しているということは、それに対するあなたの回答もある程度想定しています。その場合必要なのは、あなたが回答する場合に、その回答の次に、それを受けて取調官が何と聞いてくるかを考えなくてはいけないということです。

私も、検察の取調べでは、「この質問の意図するところは?」と考え、それが理解できない場合には、容易に答えることができないという局面が多々ありました。

あなたが自己弁護をするということを前提すれば、あなたの言うことをそのまま調書にしていたのでは、彼らが有罪にできる証拠を作ることができるはずがありません。つまり逆の立場に立って、いかに有罪にするための調書を作るかということを考えた場合、どのような意図を持って質問をするかということを常に意識して取調べに臨む必要があることを十分に理解して下さい。

それが、被告人ができうるわずかなことの一つである、完全な否認調書を作るための一つの鍵になります。取調べ室の中では取調べを受ける側は圧倒的に不利な状況です。それを逆転できるのはあなたが取調べという頭脳ゲームに勝てるかどうかにかかっています。そしてあなたの最大の味方は真実です。いつも真実に寄り添っていれば勝機はあります。

取調べに際しては誰しも不安になります。そして相手があなたを有罪に絡め取ろうという意図でしか取調べを考えていないと思えば、更にその不安は増すということは理解しています。しかし、その不安を克服することが取調べを乗り切る絶対条件です。是非とも頑張って下さい。

(注)
具体的な例として、私の特捜部による取調べのケースを挙げます。

国税局査察部の強制捜査で、私は家にあった一切合財の書類、記録媒体(プライベートなビデオ含む)、友人からの手紙、写真が押収されました。その中に会社(クレディ・スイス証券)からの給与明細もありました。給与明細はある時点まで、毎月分あったのですが、私はある時点から給与明細を保管していませんでした。

特捜部の取調べにおいて、取調べ検事から「なぜあなたはある時点から給与明細を保管していなかったのですか」と聞かれました。私は、保管していなかったという記憶もなかったため、はっきりとした理由も分からず「その時期は丁度仕事が超多忙になった時点だと思われるので、忙しくて給与明細を開くこともなく捨てたのではないか。自分はA型で、シリーズ物の途中が抜けると非常に不愉快なので、その後は一貫して保管しないことにしたのではないか」という推測で答えました。私に散々説明させた挙句に、取調べ検事が言ったことは次のことでした。

「その時点で、会社は給与明細をペーパーレス化してオンラインでしか提示しなくなったんです。あなたはそれを知りながら、給与明細を見ないかのような虚偽の主張をするためにそのような説明をしたのではないですか。」

私は、その取調べのその日まで、会社が給与明細をペーパーレス化して配布しなくなったことすら知りませんでした。それが事実なのですが、それが事実であると認められると、給与関係の書類の内容を理解しないどころか、全く意識しないということになり、検察の有罪立証にとっては不利な要素となります。その日のその後の取調べは、それを意図的な虚偽の主張にしたい検事とのバトルになりました。

そもそも調べればすぐに分かるような(会社が給与明細をペーパーレス化した)ことに嘘をつくことのナンセンスは、考えればすぐに理解できるはずですが、とにかく「真実と違う供述をした」という一点から突破口を開こうとした、検事の取調べの実態が明らかになったできごとでした。










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2014/08/20 Wed. 22:58 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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