「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (430) 「森炎氏著『教養としての冤罪論』解題(3)~冤罪ライン② 「被害者家族が犯人とされる悲劇はなぜ起こる」」 11/3/2014 

#検察なう (430) 「森炎氏著『教養としての冤罪論』解題(3)~冤罪ライン② 「被害者家族が犯人とされる悲劇はなぜ起こる」」 11/3/2014

刑事裁判では「誰が、いつ、どこで、誰に対して、どのような(犯罪)行為をしたのか」が立証される必要があることは、このシリーズ前回のブログで述べたところです。

そして、その立証の労力が少なくなる場合に、冤罪のリスクが高まると言えます(究極的なのは、その全てを同時にカバーする一つの証拠、即ち自白が作られる場合です)。

内部犯行説も、外部犯行の可能性が完全に潰せていない場合、その事件に含まれる冤罪性は高まるものです。それは、内部犯行説を取れば、「誰が、いつ、どこで」という立証をすることが不必要になるからです。

家族である以上、犯行時間帯にそこに居たのは当たり前のことなのに、それを犯罪視することで、被害者家族が犯人とされる悲劇が起こり得ます。

森氏は内部犯行という冤罪ラインに関して、捜査の過程に注目しなければならないという非常に重要な指摘をしています。以下に引用します。

「捜査する側からすれば、内部犯行説を取ることで、一挙に解決(世に言う「事件解決」)に持ち込めるということでもある。

捜査機関が途中から内部犯行説を採用するというのは、一挙解決の特別手段に踏み切ったにほかならない。だから、捜査の行き詰まりを打開するために、内部犯行説という最後の、そして安易な方法に頼ったのではないかと、裁く者は捜査のやり方を疑ってみなければならない。

その意味では、法廷に出された証拠を眺めているだけではなく、捜査の過程に注目する必要がある。」

このパターンに該当する実例として、オフィシャルに冤罪と認定された徳島ラジオ商事件(1953年、注1)が『教養としての冤罪論』の中で挙げられています。

また、森氏は「内部犯行説のもう一つの落とし穴」という表題で、事故死と内部犯行の違いもはっきりつかないことを述べています。

事故死であれば、そもそも犯罪性はないはずですが、捜査機関がそれを犯罪視することによって事故死があたかも犯罪のように演出され、その犯人として内部犯行説が取られる構図は、外部犯行を内部犯行とする錯誤に酷似しています。

『教養としての冤罪論』では、このパターンに該当する実例として因島毒まんじゅう事件(1961年、注2)と大崎事件(1979年、注3)を挙げています。それ以外にも、東住吉放火殺人事件(1995年、注4)や、北陵クリニック/仙台筋弛緩剤えん罪事件(2000年、注5)も思い出されるものです。

(注1)
徳島ラジオ商事件 (『教養としての冤罪論』より)

「ラジオ商」とは電気店のことで、当時はそういう呼び方をしていた。

明け方の午前5時ころ、電気店の主人が店舗兼居宅の寝室で殺害され、同居の内妻も負傷した事件だったが、検察は、内部犯行説を取って、怪我をしていた内妻を殺人犯とみた。この事件では、部屋の中に靴跡らしき痕跡があり、内妻自身も重傷を負っていたが、それでも検察の見方は内部犯行だった。

内妻は、夫ともども侵入者に襲われたと訴えるが、裁判でも顧みられることなく、有罪判決(懲役13年)が確定する。

徳島ラジオ商事件で有罪の決め手になったのは、住み込み店員2名の証言で、「当夜、夫婦が喧嘩をして争っているのを見た」「奥さんから凶器の包丁の投棄を頼まれた」と述べていた。

ところが、内妻の有罪判決が確定した後になって、2人は、証言は嘘だったと告白した。この事件は、何度もの再審請求を経た末に再審無罪となったが、それは事件発生から32年後のことだった。そのときには、すでに内妻は死去していた。

この事件では、警察は当初は、まったく別の者2名(暴力団関係者)を逮捕して取り調べていた。明らかに、当初は外部犯行を疑っていたのである。検察の内部犯行説によって内妻が逮捕されたのは、事件から9ヵ月以上も経ってからである(この事件では捜査側の見立てが時間的に変化しただけでなく、警察と検察の見解に内部対立とも言うべき相違があった)。

内妻の犯行を証言した住み込み店員は、2人ともまだ十代で(16歳と17歳)、彼ら自身が別件で逮捕されて取り調べを受けた結果、前記の供述をするに至っていた。

(注2)
因島毒まんじゅう事件
一審懲役15年判決、二審無罪判決後無罪確定。

(注3)
大崎事件
懲役10年確定後、再審請求。第一次再審請求により鹿児島地裁が一旦開始決定するも、検察即時抗告、福岡高裁開始決定取消、弁護側特別抗告、最高裁で棄却。第二次再審開始請求は、鹿児島地裁により棄却、弁護側即時抗告、福岡高裁棄却の後、弁護側特別抗告の方針。

(注4)
東住吉放火殺人事件
ここをクリック→ #検察なう (112) 「東住吉放火殺人事件に思うこと」

(注5)
北陵クリニック/仙台筋弛緩剤えん罪事件
ここをクリック→ 冤罪ファイル その11 「北稜クリニック事件 / 仙台筋弛緩剤えん罪事件」

教養としての冤罪論

11/3/2014













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category: 刑事事件一般

2014/11/03 Mon. 02:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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