「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その9  「早稲田大学大学院法務研究科授業より 『調書を問答形式で逐語的に作成させる』」 

無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その9  「早稲田大学大学院法務研究科授業より 『調書を問答形式で逐語的に作成させる』」

先日、早稲田大学大学院法務研究科での授業に招かれました。授業の講師は、私の刑事裁判の主任弁護人小松正和弁護士の元所属していた事務所の先輩弁護士の児島幸良先生です。

児島
(小松先生と司会・進行をする児島先生)

その授業に先立ち、彼らは拙著『勝率ゼロへの挑戦』をテキストとして事前に一度授業をしており、生徒は私の本を読んだ上で参加していました。

その日の授業で、児島先生は、私が無罪を勝ち得た鍵として重要なポイントをいくつか指摘しました。さすがプロフェッショナルらしい着眼点です。それを以下に列挙します。

1) 検察官調書が問答形式で逐語的に作成されたこと
2) 検察官調書の署名を一度拒否したこと
3) 嘆願書を集めたこと
4) 有能な弁護士に依頼したこと

これらに関し、授業で解説を求められました。これまでにブログで書いてきたことと重複する部分もありますが、改めてそれをまとめてみたいと思います。

まず、今回は「検察官調書が問答形式で逐語的に作成されたこと」に関して。

無罪を勝ち得た鍵として上に挙げた4点のうち、2点が調書に関するものであるように、刑事裁判において調書の重要性は強調しても、し過ぎることはありません。

裁判においては、調書(特に検察官作成の検面調書)は最重要証拠の一つであり、捜査機関の取調べは、真実解明のためではなく、有罪立証のための調書を作成することが目的だと言い切ってもいいと思います。少なくとも、被疑者として取調べを受ける場合、それだけの緊張感を持って、調書には細心の注意を払うことが必要です。

一般的に調書は、その日の取調べが一通り終わった後で、捜査官が一人称で文章を作成しまとめます。我々一般人の感覚からすれば、調書は取調べの内容を客観的に反映したものであるべきだと考えがちですが、後に裁判で証拠として使われ、「無罪になれば負け」と捜査機関が考えている以上、調書の内容が中立的に書かれるというのは、あまりにお人好しな感覚だと理解できます。

つまり、被疑者の言っていることをそのまま書いていたのでは、取調官の仕事にならないという発想が彼らにはあります。そして、被疑者の言っていることとあからさまに全く違ったことを書けば訂正を求められてしまうため、間違ってはいないけれども、裁判官の心証が取れるように、微妙にニュアンスを変えて「作文」することが、取調官の技術として求められます。一人称形式は、読む者にあたかも本人がそのまま陳述したように感じさせるため、信憑性が増すと考えられているのだと思います。

そして一人称で書かれた調書に、突如として問いと答えが挿入されることがあります。これは、取調官が怪しいと思っている部分を示す符牒で、「ここでの被疑者の答えは眉唾だと考えているので、裁判官もそのつもりで読んで下さい」というメッセージです。

私は、国税局に告発されるまでは、話せば分かると思い込んでいたため、弁護士を付けていませんでしたが、刑事告発されて初めて、無理にでも有罪にしなければならないという捜査権力の意図を理解し、プロフェッショナルのサポートが必要だと考えました。それで出会ったのが小松弁護士です。

彼から、一人称形式に挿入される問答の符牒のことを教えられていました。私の検察取調べでは、初回からいきなり調書が作成されたのですが、その調書で、まさに一人称形式に問答が挟まれたため、私は強硬に抵抗しました。

私としては、一人称形式に問答を挟むことをやめてくれというつもりだったのですが、検察官が選んだのは、驚くなかれ「全て一人称形式」ではなく「全て問答形式」の調書でした。これは実に異例なことです。

取調べ検事の説明は、「我々が調書を作文しているという批判には辟易している。取調べ可視化の流れもあり、今回の取調べでは、より客観的な逐語的に問答形式で調書を作成することを選択する」というものでした。取調べの録音・録画に代わる、通常の調書より客観性を高める手法ということでのテストケースだったのだと思われます。比較的すんなりと「全て問答形式」という異例な選択をしたことから、ある程度準備していたことだったのかもしれません。

これにより調書の客観性を著しく高めることができます。そして逐語的に書かれることの最大のメリットは、被疑者に有利な証拠を残すことができることです。

捜査権力の最大の優位性は、恣意的に調書を作成できることです。一人称で取調官が調書を作成する場合、取調べの際に語られた被疑者に有利な証拠が調書に書かれることはありません。それに対し、逐語的に調書が作成された場合には、被疑者が述べる被疑者に有利な供述がそのまま書かれることになります。これは非常に大きな差です。

しかし、問答形式の調書は、被疑者にとって必ずしも有利とは言えない問題点があります。授業でも、児島先生に、「問答形式の調書を取らせることは勧められると思いますか」と聞かれましたが、私の答えは、「ケースバイケース。一般的にはどちらかといえばノー」でした。

問答形式の調書は、検察官と被疑者のハンデキャップの差を更に大きくするからです。検事は、事前に質問を用意しています。そして、彼の言葉を事務官がパソコンに打ち込むと同時にディスプレイで目にすることができます。そしてそれを見ながら、修正することが可能です(キムタク主演のドラマ『HERO』の取調べのシーンを思い浮かべて頂ければイメージしやすいと思います)。

それに対して被疑者は、その場で聞かれた質問の答えを頭の中考え、それを一旦口にしてそれが調書に取られると、その訂正は極めて困難です。一人称形式の調書であれば、自分の言葉でない以上、訂正を求めて記述内容の変更を求めることが可能ですが、逐語的に書かれた問答形式では、検事は「我々はあなたの言った通りに書き取ったんですよ。あなたは自分の言葉に責任を持たないということですか」と頑として訂正を受け付けないという状況になります。

制限時間内に小論文を書くテストで、片や題材が事前に分かっていて、ワープロで解答を作成するのに対し、片やその場で題材を知らされ、原稿用紙にボールペンで書いて一切書き直しは認められないというくらいのハンデキャップだと考えて頂ければよいかと思います。

後から調書を読み聞かされると、自分の真意が表れていないということはままあります。私の取調べでは、初日の調書で、訂正を求めるだけのことに2時間も怒鳴り合ったため、次回の取調べから私は極端に慎重になりました。

検事の質問を聞いてから、完全に頭の中で答えを反芻し、文章に落としても問題ないと確認してから回答しました。また、検事の質問の意図を読み、自分の答えにどのように切り返してくるかを想定しなければ答えない、怖くて答えられないという状況でした。

私の取調べは録音・録画されていませんでしたが、もしされていたとすれば相当奇異な情景だったと思います。検事が質問して、私が口を開くまで2ー3分、じっと考え込むというシーンが何度もありました。この作業は、相当神経をすり減らします。ただでさえ長時間の取調べで集中力を維持することが困難な上に、常に緊張を強いられるというのが、逐語的に作成される問答形式の調書です。

このハンデキャップを覆すだけの精神力や集中力がなければ、容易に言質を取られてしまうのが問答形式の調書だと言えます。そのことは検察も理解しているため、優秀な検事であればあるほど問答形式の調書作成には抵抗が少ないと思われます。

自分に絶対的な自信がある被疑者の方は、是非問答形式の調書を作成することを要求してみて下さい。私がまた再び取調べを受ける機会があれば、私は勿論、問答形式の調書の作成を要求します。













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category: 無罪を勝ち得るために

2014/11/10 Mon. 09:33 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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