「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その10  「早稲田大学大学院法務研究科授業より 『調書の署名を拒否する』」 

無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その10  「早稲田大学大学院法務研究科授業より 『調書の署名を拒否する』」

このシリーズ前回のブログでは、調書を逐語的に問答形式で作成させることの是非を論じました。

ここをクリック→ 無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その9  「早稲田大学大学院法務研究科授業より 『調書を問答形式で逐語的に作成させる』」

引き続き、早稲田大学大学院法務研究科の授業でディスカッションされた内容をまとめます。今回のお題は、『調書の署名を拒否する』ことは有効か。

以前述べたように、取調べは裁判となった場合に有罪立証の証拠となる調書を取るために行われます。つまり極論すれば、調書に取られない取調べは、捜査当局にとっては、やる意味がないものです。

取調官は、調書を作成した後で、その調書を被疑者に読み聞かせ、その内容が正しいと認められた場合には、署名を求めてきます。この署名がかなりトリッキーです。内容が正しくないと思われた場合、署名する義務はないということは比較的容易に理解できますが、その内容が正しかったとしても、署名することは必ずしも義務ではないと説明されることはありません。

調書に署名する、しないが非常に大きな意味を持つことを多くの被疑者は知らされることはありません。あなたが取調べを受ける場合には、この差を十分に意識して下さい。

日本の刑事司法の取り決めは非常に効率的にできています。その効率性とは、「いかに被疑者・被告人が巧妙に言い逃れしようとも、最後は必ず検察が勝つようにできている」というものであり、そうした刑事司法の取り決めが、検察は必ず正しいという前提に作られていることは言うまでもないと思います。

調書は「伝聞証拠」とされ、弁護側、検察の双方が同意しなければ、公判において証拠として採用されることがないことが原則です。しかし、原則には必ず例外があり、先の効率性がここでも威力を発揮します。弁護側が不同意にするということは、被告人にとって不利なものということですが、それが被告人本人の供述調書の場合、実務上はいかに弁護側が不同意としても、証拠採用されることが認められています(注)。

ところが、弁護側不同意であっても証拠採用されるための重要な条件が、その供述調書に被告人の署名があることです。逆に言えば、調書に署名がなければ、弁護側不同意の場合には、例外なく証拠採用されないことになります。この差は非常に重要です。

それでは、全ての調書に署名しなければいいじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ケースバイケースですが、私は基本的にはそれには賛同しかねます。

端から署名しないとすることは、検察にとってみれば、取調べに非協力的であり、検察の大きな権限である不起訴の可能性を被疑者自ら狭めることにつながると、私は考えます。被疑者段階では、まず不起訴を目指すべきであり、そのためには、取調べには真摯かつ誠実にそして協力的であることが必要だと考えます。

また署名拒否は、逮捕されていない時点では、より逮捕の可能性を増すことも考えられます。

黙秘との比較はどうでしょうか。私は、署名を拒否することは、黙秘よりもスマートだと考えます。黙秘を貫くのはそれほど楽なことではありません。「黙秘します」「はい、そうですか」と捜査権力が納得する可能性はゼロです。また、法律的な建前は、黙秘権は被疑者・被告人の正当な権利ですが、「弁解できないから黙秘するんだ」という予断を招くリスクもあります(特に職業裁判官ではない裁判員にありがちかもしれません)。

辛い黙秘をするくらいなら、思い存分釈明をして、最後に署名だけ拒否することの方が、不同意することができる調書を作成するという弁護側の武器を増やすという観点からも、より有効だと思います。

私は、検察の取調べは終始真摯に対応し、納得した上で署名していましたが、一度だけ、取調べ内容があまりに揚げ足取りの下らないものであったため、激論に業を煮やして署名を拒否しました。その際も、一旦席を外すことを要求し、待機していた小松弁護士に連絡を入れた上で、署名を拒否しました。もし弁護士的にNGなら、その時点でそれは辞めた方がいいというアドバイスがあるだろうと考えたからです。

小松弁護士の返答は、「了解しました。検察官は相当抵抗すると思いますが、頑張って下さい」でした。そして彼の言う通り、署名を拒否した後の、検察官の圧力は相当のものでした。

その際に、検察官が言った言葉は、「調書に署名しないとなると、これからの取調べの意味がないということにもなりますが、今後も調書には署名しないということでしょうか」でした。

その言葉を聞いた時に、取調べとは調書を作るためのものであり、署名をしないということは非常に効果的であると理解しました。また同時に、「今後も調書に署名しない」と答えたならば、逮捕されるのだろうと感じました。

どのようなケース、いかなるタイミングで調書の署名を拒否するかという、この伝家の宝刀の使い方は、もっと議論されてもいいと思います。冤罪と戦う場合の、強力な武器だと私は考えます。

(注)
刑事訴訟法第322条1項(前段)
「被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。」
















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category: 無罪を勝ち得るために

2014/11/20 Thu. 00:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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