「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (438) 「美濃加茂市長事件アップデート~贈賄供述者の判決の重要性」 12/18/2014 

#検察なう (438) 「美濃加茂市長事件アップデート~贈賄供述者の判決の重要性」 12/18/2014

まず郷原信郎弁護士の最新ブログ「5700万円融資詐欺不起訴の陰に「贈賄供述者の企み」」をじっくりお読み頂ければと思います。

ここをクリック→ 『郷原信郎が斬る』 「5700万円融資詐欺不起訴の陰に「贈賄供述者の企み」」

ここでのポイントをかいつまんで説明します。

贈賄供述者の中林氏は、3億7850万円の融資詐欺を働いていましたが、当初検察に起訴されたのは2100万円のみ。贈賄の供述をすることで、融資詐欺の大部分を見逃してもらうという「裏司法取引」が強く疑われる事案です。

郷原氏を主任弁護人とする藤井弁護団は、4000万円の融資詐欺(詐欺罪及び有印公文書偽造・同行使)を告発。これにより検察は4000万円分に関して不起訴の判断を覆して追起訴。その後、藤井弁護団は更に5700万円の詐欺を追加告発したところが、この追起訴はされなかったというのがこれまでの経過です。

5700万円の告発も追起訴するということになると、融資詐欺の合計金額が1億を越えることとなり、かなりの期間の実刑が見込まれることとなります。

当初2100万円の起訴であれば、3年程度の求刑(注1)で執行猶予が付くと思われていたものが、追起訴の結果、検察の求刑が4年6ヶ月となり、一審有罪の場合の実刑判決はほぼ確実です。ただ一審有罪であっても、控訴して、その間に被害弁償を行えば、控訴審で執行猶予が付く可能性もあるというぎりぎりのラインでした。ところが5700万円の追起訴となると、その可能性も消えてしまうため、中林氏としては、「当初と話が違う」と贈賄の供述を覆すことも考えられ、検察が追加告発分に関してはなりふり構わず不起訴としたという経緯が、郷原氏の読みです。

贈収賄の金額はわずか30万円です。勿論、もしもその事実があれば、金額がいくらであれ犯罪は犯罪だと言えますが、数億の詐欺を不問にしてまで30万円の贈収賄を立件しようとする、検察の「バッジを挙げる」執念には、怖気(おぞけ)さえ覚えます。

そして、この数億の融資詐欺を不問にするということは、私が支援している佐藤真言氏、朝倉亨氏の、粉飾決算による詐欺を「フレームアップ」してまで立件したこと(注2)と照らし合わせても、甚だしく不公正だと思われます。

中林氏の贈賄、融資詐欺に対して、検察の論告求刑が行われ、その判決が来年1月16日に出されることが予定されています。

贈賄供述者の判決が、藤井氏の判決に与える影響はどのように考えるべきでしょうか。少し考えてみました。

収賄罪と贈賄罪は、収賄行為と贈賄行為の両方の行為が犯罪となることが必要である必要的共犯(「対抗犯」)とされます。贈収賄とは、あくまで賄賂を贈った人間がいて、それを受け取った人間がいるというペアになった犯罪です。

中林氏の贈賄に関しては、本人も認めており、贈賄罪が有罪となることでの(融資詐欺の大部分を見逃してもらうという)メリットを考えると、弁護人も敢えて無罪を主張することはないものです。こうなるとスポーツで言えば、負けることを狙った無気力試合のようなもので、それが相手チームも了承済みであれば、八百長試合です。しかしながら、審判としては、無気力試合をしようとしているチームを勝たせることは難しいと思われ、結果は有罪の可能性が高いと思われます(この点に関して、「誰しも自白が唯一の証拠である場合、自白によってのみ罪に問われることがない」という法律規定が意図するところの人権保障の範囲を、被告人本人ではなく、必要的共犯の藤井氏に援用した、先の郷原氏のブログでの論理は興味深いところです)。

中林氏の贈賄罪の有罪は、ペアとなる藤井氏の収賄罪の有罪を意味するのでしょうか。そうはならないところが、刑事裁判の不思議なところでもあり、興味深いところでもあります。

それは、中林裁判体と藤井裁判体は裁判長が異なり、見ている証拠も全く別だからです。

刑事裁判とは、過去に起こった事件の真実の追求は(努力はするものの)そもそもが不可能であるという不可知論に立ち、(全ての証拠でなく)テーブルの上に置かれた証拠のみから、「有罪らしさ」「無罪らしさ」を裁判官が気の向くまま、心の向くまま判断する(これを「自由心証主義」といいます)というものです。

見ている証拠も違えば、判断する裁判体も異なるということになれば、結果が異なる可能性があるということは至極当然と言えます。

とは言うものの、本来は対抗犯の双方によって成立する贈収賄が片や有罪、片や無罪というのはいかにも不安定な気もします。その場合、無気力試合をするチームを勝たせて無罪にすることはなくても、判断を留保する可能性があると考えられます。それは、「弁論の併合」が行われた場合です。刑事訴訟法(注3)により、裁判所は二つの裁判を一緒にすることができます。そうすれば、両方の証拠を同じ裁判体が見て判断するということになります。

もし1月16日の判決で、中林氏の贈賄罪に関して、弁論の併合が行われるならば、その理由は明らかですから、藤井氏の無罪の可能性はぐっと高くなると私は見ています。

もし弁論の併合が行われず有罪判決となれば、あとは自由心証に基づいた藤井裁判体の判断になります(贈賄有罪の影響は未知数)。

但し、アグレッシブな郷原氏のことですから、1月16日よりも前に更に次の手を打ってくることも十分に考えられます。いずれにせよ、今後も注目していきたいと思っています。

藤井氏被告人質問の傍聴記はこちら。
ここをクリック→ #検察なう (428) 「美濃加茂市長事件藤井氏被告人質問傍聴記」

(注1)
執行猶予は3年以下の懲役に、裁判官の裁量で付すことができます。量刑相場は検察求刑の七掛けと言われていますから、検察の求刑が3年であれば、実際の求刑は確実に3年以下となり、3年以下の検察求刑は、検察から裁判官への「執行猶予付きを求める」メッセージだと言われています。検察の求刑が4年を越えれば、七掛けしても実際の求刑は3年を越えるため、それは逆に「実刑を求める」メッセージだと言われています。

(注2)
株式を上場していない中小企業において、粉飾決算そのものは犯罪の構成要件ではありません。しかし、粉飾決算で会社の経営状況を実態よりもよく見せることで銀行からの融資を引き出せば詐欺罪となります。それでも返済能力があれば粉飾決算は借りるための方便であり(赤字会社には銀行は融資しないため)、実際に返済がなされれば、違法性は低いと考えられます。

佐藤氏は銀行出身の経営コンサルタント、朝倉氏は中小企業社長でした。彼らは、悪質な類似事案(当初から計画倒産を目論んでいた)のとばっちりを受けて検挙され、返済の目途があったにも関わらず、資金繰りのタイミングを見計らってその前に朝倉氏が逮捕されることで会社は倒産、検察は銀行に被害届を出させて「事件を作った」というものです。そのため、佐藤氏と朝倉氏は実刑判決を受けました。

詳しくはこちら。
ここをクリック→ #検察なう (209) 「何が社会正義かを問う 『四〇〇万企業が哭いている 検察が会社を踏み潰した日』を読んで」

ここをクリック→ #検察なう (289) 「佐藤真言氏 『粉飾 特捜に狙われた元銀行員の告白』を読んで」

(注3)
刑事訴訟法第313条第1項
「裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て、弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる。」

12/18/2014















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category: 美濃加茂市長事件

2014/12/18 Thu. 01:28 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

八田さま
美濃加茂市長の逮捕劇、注目しておりましたが、何かしら
可笑しな方向になっておりますね…
当初より全国最年少市長で注目度も高く、捜査側にとっては美味しい事件で
飛びついたのでは…そんな気がしておりましたが、
私が想像していたような展開になってまいりました。
想像していた展開とは、知名度が高く全国的な話題になるであろう事は必至で
各大手のマスコミも新聞或いはテレビニュースで大きく報道するでしょうから
捜査に当たる幹部は捜査本部を設置して色めき立っていた事は間違いの無い所だろうと思います…が、事件を調べて行く内にストリーと違い何かしら初め2人の会食だったのが3人であったり辻褄の合わない事が出てきたりと…まして本人は若く、密室に閉じ込めて恫喝・強要すれば落ちると思ったのでしょうが、
頑なに否認を貫く中で、ひょっとしたらこれは無実では無いかと感じた捜査員もいたのではなにのかな…と思いますが、
捜査本部を設置してしまった以上、幹部は「何もありませんでした」と引き返す訳にも行かず、窮地に陥った警察を救うため、検察が何が何でも起訴して有罪に持って行こう…としているのではと感じて想像をしておりました。判決は出ておりませんのでどのような結果になるかはわかりませんが、
私も同じような経験をしておりますのでそのような想像をした次第です。
それにしても本人が語っておりましたが「美濃加茂市を焼け野原にするとか…」・「こんな若造を市長に選んだ市民の気が知れない…」
とか、その他にもあるのでしょうが、脅しもここまでいけば拷問に
等しいのではと思います。
そこに人権などは微塵も感じません。裁判が終わる前から完全な
犯罪者扱いですよね…もしも、裁判で無罪とされたら取り調べをした捜査官は
脅迫罪・凌辱罪でお咎めを受けるのでしょうかね…?おそらく捜査側は
適正な取り調べ…と言ってお咎めなしでしょうね!何をやっても許される組織だから怖いもの無しなのだと思います(後からの証拠保全のためにも可視化は必要と思うのですが)こんなんでいいんでしょうか…と思うのは私だけでしょうか?藤井市長のお父さんが元警察官だったとか…息子は親の背中を見て育つものですから、自分が警察から取り調べを受ける身となり、経験して父親の居た警察の組織をどのように感じているでしょうか?複雑な思いでしょうね?冤罪が作られる構図など経験したものでなければ分かりませんでしょうが、冤罪を無くす為に頑張っておられる八田さんに敬意を表しております。
美濃加茂市長の裁判そして結果を注目しております。

#- | URL | 2014/12/18 Thu. 19:46 * edit *

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