「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

02« 2017 / 03 »03
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

「死刑制度について考える(7)~死刑の法的正当化根拠」 

「死刑制度について考える(7)~死刑の法的正当化根拠」

死刑に関して最近読んだ『いま死刑制度を考える』(慶應大学出版会)に、興味深い論考がありました。

ここをクリック→ 『いま死刑制度を考える』

椎橋隆幸氏の「日本の死刑制度について考える」と題された論考に、死刑の法的正当化根拠が論じられていました。存置・廃止論者共に、この論考を踏まえ、更に思索を深める必要がありそうです。

(以下引用)
「死刑の法的正当化根拠」

1 死刑の是非と刑事司法制度の在り方・運用の問題

アムネスティが死刑に反対する理由として次の点が主張されている。①死刑は「生きる権利」を侵害する、残虐で非人道的な刑罰である。②罪のない人を処刑する危険性は決して排除できない。③死刑になるのは、どこの国でも、貧困層やマイノリティなど、社会的弱者に偏っている。④死刑は政治的弾圧の道具として、政敵を永久に沈黙させたり、政治的に「厄介な」個人を抹殺する手段とされてきた。この中、②誤判の危険性、③弱者に対する差別的捜査・起訴・裁判・刑罰の発動、④政治的弾圧のための死刑の利用の各問題は、刑事司法制度の在り方と運用の問題である。死刑が歴史上、国によって、上述のような使われ方をしたことは事実である。しかし、これらの問題を解決するためには刑事司法制度の在り方と運用を改革するのが正しい処置の仕方である。死刑を廃止したからといって死刑廃止によって直ちに違法・不当な刑事司法の運用が正される訳でもないし、死刑以外の刑罰は違法・不当な刑事司法の運用に任せておいてよいということも許されない。他方、違法・不当な刑事司法の運用は永久に改革できるものではないとの絶望感に陥ることも正しくない。国によってその進度は違うが、誤判の危険性を減らす手続的な方策は充実してきているし、差別的な捜査・訴追・裁判を監視・是正する制度も創設されてきている。政敵を弾圧するために死刑を利用するような政治体制は国民が選挙等の方法によって変革しなければならない。また、違法・不当な刑事司法制度や運用は改正されなければならない。弾圧、抑圧の刑罰は正義に反するが、正義に適った刑罰が否定される理由はない。

2 死刑は「生きる権利」を侵害する、残虐かつ非人道的な刑罰か

さて、死刑は「生きる権利」を侵害する、残虐で非人道的な刑罰であるから廃止されるべきとの主張は説得力があるだろうか。この主張においては、例えば、殺人犯人に「生きる権利」があることが自明のこととして前提されている。すべての人間に生きる権利があることは当然である。しかし、他人を殺害した者に「生きる権利」が当然にあるかは自明ではない。人間は生まれながらにして様々の権利を有しているが、同様に生まれながらの諸権利を有している他人の権利を侵害した場合は、侵害者から一定の権利が奪われることは一般に承認されている。契約違反や不法行為を行って他人の財産権を侵害すれば、自分の財産権を奪われることとなっている。また、犯罪を侵せば、その犯罪の種類や程度によって、犯罪に見合った刑罰が科せられ、その結果、犯人の自由権や財産権が奪われることになる。何故、「生きる権利」だけは何をしても奪われることがないのか。論証もなく自明のこととして、どんな凶悪な犯罪を行っても、何人殺害しても、その犯人には「生きる権利」を認めるというのは、論者の希望の表明、独自の見解ではあっても、すべての人に受け入れられる真理ではあり得ない。例えば社会契約論の立場から、死刑廃止論に対する次の反論は分かりやすく、説得力があり、事柄の本質を正当に指摘しているものと思われる。すなわち、「他人からの不侵害の約束を得られるには、先ず自己の側から凡ての他人の生命や自由・幸福を尊重し侵害しない旨の約束と、この約束の遵守を有効に担保する方法とを提供せねばならない」との前提に立つと、死刑廃止論者は、「私はあなたを殺さないことを一応約束する、しかし、この約束に違反して恣意的にあなたを殺すことがあっても、あなた達は私を殺さないことを約束せよ」と要求するものであり、その要求を認める立法は、「違法の殺人犯人の生命は、彼の犠牲となった適法な人間の生命よりも、より厚く保護せられ、より価値高く評価されることを予め法定することになる」。他人の生きる権利を侵害しても自分(殺人犯)の生きる権利だけは保護されるべきとの理屈はあまりにも身勝手で理不尽かつ不平等である。廃止論はこの身勝手で理不尽かつ不平等な理屈を認めることになるのである。この理屈によれば、権力者が政権の政治に反対する民衆を多数殺害してもその権力者の「生きる権利」は奪うことができないので、死刑にはできず、また、ある集団が特定の人種の人々を嫌いだという理由で多数の人々を殺害しても同様の根拠で死刑にはならない。組織的犯罪集団が、犯人をあたかも将棋の駒として使い、組織的に大量殺人を計画し実行し、それを繰り返したような場合、被害者の生命は多く失われるのに対して犯罪集団員の生命は一人たりとも奪われないこととなり、そのような結果を是認する国家は国民からの信頼を失わざるを得ないであろう。生命は人間の尊厳の中核的な価値である。刑罰の基準にある正義は、侵害された人間の尊厳の価値の再確認と可能な限りの原状回復を要請するとも表現される。人間の尊厳の最も中核にある生命を奪われた場合、その価値の再確認・原状回復は損害賠償や自由剥奪等の制裁によって補填できるような価値ではない。「社会における、個人の自己表現の中核である生命への尊厳を再確認する『儀式』として『死刑』という極刑が正当化される」のである。

他人の生命を奪うことは絶対に許されることではない。絶対に許されないことをした場合には自分の死によってしか(でも)その罪は償われないのだということ、つまり、凶悪な犯罪には極刑が科されるという規範を形成し、その規範を内面化するために死刑制度が存在するという意義があると言えるであろう。

3 死刑は「国家による殺人」ではない

死刑廃止論者の中には、死刑は国家による殺人だから許されないとの考え方がある。この言い方は死刑廃止の運動論としては意味(効果)があるかもしれないが、法的正当化根拠としては適切ではない。死刑は人の生命を奪うという点で外形的には殺人との共通性があるが、法的正当化根拠として重要なのは物理的、外形的な共通性ではなく、社会的、法的な意味で決定的な違いがあることである。殺人は正当な理由なく他人の生命を奪うもので殺人罪と評価される。死刑は殺人罪等に対する正当な刑罰という形で法律に定められているものである。仮に、物理的、外形的な共通性で考えると懲役刑という自由剥奪刑は国家による「誘拐」「逮捕・監禁」で、罰金は、国家による「強盗」とも言えそうであるが誰もそうは言わない。同様に死刑についても国家による「殺人」と言うのは正しくないと思う。つまり、殺人とか強盗は違法な犯罪であるのに対して、死刑や懲役刑は違法な行為に対して科される正当な刑罰である点で決定的に違うのである。従って、死刑を国家による「殺人」だから廃止すべきであるとする主張は法的正当化根拠としては成り立たないのである


















好評発売中!
ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1




ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう フェイスブック・コミュニティ






TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 死刑制度について考える

2015/02/02 Mon. 00:23 [edit]   TB: 0 | CM: 1

go page top

この記事に対するコメント

復讐装置としての死刑

最近の記事なので既に既読かもしれませんが:

・「死刑容認」8割、終身刑導入でも「存続」5割 内閣府調査
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H3P_U5A120C1CR8000/

この世論調査を見て思ったのは、日本の世論は誤審の可能性や刑事制度の問題点よりも、刑罰の強化によって治安を維持する方を優先させる傾向が強いなという事です。

今の刑事司法制度上に残存する瑕疵や問題点によって発生しうる冤罪の可能性を多少なりとも考慮に入れれば、ここまで偏った数字にはならないでしょう。

Tri #6Aros7K. | URL | 2015/02/02 Mon. 07:05 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/815-049423b3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top