「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (456) 「美濃加茂市長事件藤井氏無罪判決公判傍聴記」 3/9/2015 

#検察なう (456) 「美濃加茂市長事件藤井氏無罪判決公判傍聴記」 3/9/2015

3月7日に弁護士会主催の前田恒彦元特捜部主任検事と私の講演&パネルディスカッションが名古屋であり、どうせ名古屋に行くのならと、これまで支援してきた藤井氏の判決を傍聴しに3月5日の判決当日名古屋入りしました。

彼の主任弁護人の郷原信郎氏は、私の国賠審代理人チームのメンバーでもあり、私の国賠審の弁護士ミーティングでもよく美濃加茂市長事件のことは話題になります。先日もミーティングの際に、郷原氏が「3月5日の判決言い渡しは、2時間以上となりそうです」と言ったところ、元判事の森炎氏が「なら無罪でしょ(笑)有罪なら理由の言い渡しにそんなに時間かからないし」と言っていました。しかし、刑事裁判は有罪率が99.9%超えというとんでもない世界なので、「試合に勝って勝負に負ける」ということは十分ありえます。

当日は見事な晴天。でも寒っ!

裁判所

開廷前の藤井氏です。余裕の笑顔かな?

藤井市長

傍聴券を無事ゲットして入廷しました。

傍聴券

開廷前に撮影が入るのは、東京地裁でも経験しているのですが、名古屋地裁では、撮影後に裁判官の方々は一旦退廷します。そしてすぐさま再入廷(東京地裁では撮影後そのまま開廷)。ところ変われば品変わるなんですね。

緊張する間もなく、裁判長の判決読み上げです。

「主文、被告人は無罪。」

うーん、やはり「被告人『は』」と聞くのはいいですねえ。「を」は聞きたくないもんね。記者が速報を伝えるべく、雪崩を打って飛び出して行きます。

判決理由読み上げが始まって、「おっ!」と思ったのは、ディスプレイに判決理由の項目を、箇条書きで映し出したことです。注目されていた事件だけに、裁判官も気配りがあるようです。

それから延々と判決理由の読み上げが続きました。これが長い!事実関係の確認に2時間はありました。それからようやく判断の核心に入るのですが、これが短い!(といっても40分くらいでしたか)裁判長、もう少し時間配分を考えてくれればパーフェクトなんですが。まあ、そんな贅沢は言えません。貴重な無罪判決です。

これまで事件の経緯については、散々ブログで書いてきたので(下に添付の「過去の美濃加茂市長事件関連ブログ記事」参照)、敢えて無罪判決理由の詳細に踏み込みませんが、一番強調されていたのは、贈賄供述者の供述内容の変遷が不合理であり信用性に疑問があるとされたことです。

賄賂を渡すという「非日常的」な行為を、記憶が混同するほど度重なるほどやっていたならまだしも、わずか2回であれば、核心的な事実は克明に覚えているはずです。初めて賄賂を渡したとされたガストでの現金授受の現場に、同席者がいたことを忘れていたというのはやはり不自然極まりないとしか裁判官にも思えなかったものです。

2回の現金授受ではいずれも同席者が離席した間に、現金が手渡されたとされましたが、その時の着座位置は、いずれも贈賄者が離席した者に背を向けるものであり、離席した者の動向に全く注意を払っていないかのようであるのも不自然だという理由を述べた時は、「ふうむ、かなり常識的な感覚だな」と感じました(非常識な感覚をお持ちの裁判官も多いので)。

そして注目の「闇取引」に関する裁判官の判断ですが、そこでの冒頭に「その可能性はない」とばっさり切っていながら、その後の説明は、ほとんど弁護側の主張を認めているかのようでした。

「融資詐欺などで既に起訴されていた贈賄供述者が自分の量刑に大きな関心を抱くのは至極当然である。捜査機関の関心を他の重大な事件に向けることにより融資詐欺の進展を止めたいと考えたり、刑事事件の情状を良くするために捜査機関に迎合する行動に出ようと考えることは十分にあり得る。贈賄供述者には虚偽供述をする理由・動機が存在した可能性があったと考えられる。」

最後に裁判長の説諭です。

「市政に尽くされることを期待しています。頑張って下さい。」

閉廷後、郷原氏と固い握手を交わしました。ひどい風邪をひいていて、開廷前はかなりしんどそうでしたが、その風邪も吹っ飛んだようでした。

今後、検察は控訴の判断をすることになります。相当無理筋であることは、火を見るよりも明らかですが、私の一審無罪も控訴したくらいですから、川に飛び込むレミングよろしく引き返すことはないような気もします。それを、完膚なきまで叩きのめすチャンスと考える意思の強さが藤井氏には求められ、彼にはそれが備わっていると信じます。

また、贈賄側が有罪であり、収賄側が無罪という、本来必要的共犯(対抗犯)とされる犯罪で、中心的な事実である現金の授受の存否に裁判所が真っ二つの判断をし、それが判決としてはあり得るというところから、「刑事裁判は真実追求の場ではない」ということを市民が理解する機会になればいいと思います。

帰り際、美濃加茂市に勝利報告に行く藤井氏に、「次は国賠ですね」と声を掛けると、「八田さんと並びました。頑張ります!」と元気に答えていました。やはり「やる男」です。俺も頑張ろうっと。

ここをクリック→ 藤井氏無罪判決後手記

ここをクリック→ 『郷原信郎が斬る』「美濃加茂市長無罪判決 ~極めて当然だが決して容易ではない司法判断~」

過去の美濃加茂市長事件関連ブログ記事

ここをクリック→ #検察なう (418) 「美濃加茂市長事件、藤井浩人氏今週初公判!」

ここをクリック→ #検察なう (422) 「美濃加茂市長事件、第2回、第3回公判で贈賄供述者の証人尋問」

ここをクリック→ #検察なう (428) 「美濃加茂市長事件藤井氏被告人質問傍聴記」

ここをクリック→ #検察なう (438) 「美濃加茂市長事件アップデート~贈賄供述者の判決の重要性」

ここをクリック→ #検察なう (441) 「美濃加茂市長事件~藤井浩人氏公判結審」

ここをクリック→ #検察なう (442) 「美濃加茂市長事件の構図」

ここをクリック→ #検察なう (443) 「美濃加茂市長事件 弁論を読み解く Part1 『贈賄供述の信用性』」

ここをクリック→ #検察なう (444) 「美濃加茂市長事件 弁論を読み解く Part2 『藤井氏の無罪性』」

3/9/2015














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category: 美濃加茂市長事件

2015/03/09 Mon. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

名古屋での講演おつかれさまでした。

今回の名古屋地裁判決は「疑わしきは被告の利益に」という原則に則った妥当な判決だと思います。裁判長が特に注目したと思われる中林証言に対して郷原先生が鋭い切り込みをして信用性を崩したのが効いたのでしょうね。

私の推察ですが、今回贈賄事件のきっかけとなった中林供述が実のところ、自分の詐欺事件で追求を逃れるために適当にでっちあげた嘘の一つで、それにたまたま愛知県警がひっかかった、というのが事実の様な気がします。

嘘であるけれど、これは最初から慎重に計画して作り上げた嘘では無く、余罪を追求されている時に苦し紛れにでっちあげたストーリだったのではないでしょうか。

であれば、細かい詳細を突かれた時にスムーズに答えられない筈ですよ。

普通、贈賄の嫌疑がかかって自白している容疑者の言う事は割り引いて評価すべきなのですが、詳細の伴わない怪しげな話でも政治案件ですから愛知県警にとってはとても魅力的に写ったのでしょうね。(出世)欲に目が眩んで判断を誤り詐欺師に乗せられたのではないでしょうか。警察が取調室で詐欺師に騙されて冤罪に加担する、というのはまるで小説みたいな話です。

多分この事件は高い確立で控訴されると思うのですが、無理というか無駄というか、単に時間の浪費にしかならないと思うのですが、高裁は高裁で検察シンパの裁判官が少なからず居ますので、検察にとって全くチャンスが存在しないかと言われると、存外そうでも無いと言わざるおえない所が有ります。

陸山会事件の様に最初から有罪ありきの裁判官にかかると、「〜であるとは限らない」とか「推認」という飛び道具を使われると、どんなに無罪根拠が固いと思われていてもひっくり返るという事が有ります。

今回の地裁の裁判長は過去に無罪判決を書いた事もあるバランスの取れた裁判官の様ですが、高裁へ移って検察寄りの裁判官が担当したらと思うと、どうしても嫌な予感が払えません。

検察は例え高裁で駄目でも最高裁でひっくり返せばなんて考えているかもしれませんが、現職の市長ならば一回の有罪が下った時点でアウトですからね。後で再審等で無罪確定しても、その時はもう手遅れなんです(damage has been done)、少なくとも日本では。八田さんが以前からコメントされている様に二重の危険の防止の意味でも、検察官の控訴には制限を加えるべきですね。現行の制度下では被告人の負担が不当に重過ぎます。

とはいえ、今回の判決はほぼ完全勝訴といっても良い内容で、例え高裁へ移っても中林供述の信用性以外にも、同席したT氏の証言など無罪を支持する根拠には事欠きませんから、可能性は低いかもしれませんが控訴断念というシナリオもあり得るとは思います。

一審で控訴断念すれば批判は起きるでしょうが、同時に引き返す勇気を示す判断をしたとも評価されるでしょうから、名古屋地検には懸命な判断を期待したいものです。

Tri #6Aros7K. | URL | 2015/03/09 Mon. 02:02 * edit *

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