「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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経過報告 (73) 「起訴その後」 12/13/2011 

経過報告 (73) 「起訴その後」 12/13/2011

先日来、盛り上がりを見せているTwitterのフォロワーも500人を越え、現時点で546人となりました。

検察との取調べにおいてマスコミの関心度が高まる中で、私は再三「これは検察にとってもチャンスである。検察改革の成果を世に示すべきではないか」と彼らの引く勇気を喚起してきましたが、それも無駄に終わりました。国家権力の前では個人は無力に等しいものです。しかし、ペンは剣よりも強し。そして現代の我々にはソーシャル・ネットワークという武器があります。もし彼らが自ら変わる気がないのなら、我々で変えるしかありません。我々個人の人権は自ら守らなければならないということだと思います。「お上に任せとけば万事安泰」の平和ボケから目を覚ます時なのかもしれません。そのためにも是非、私のツイッター・フェイスブック・ブログの拡散をお願いします。行動の時です。

起訴を受けて、「なぜ逮捕されなかったのか不思議だ」と疑問を頂くことがあります。勿論、いかに否認していたとしても、あくまで「罪証隠滅、逃亡のおそれあり」ということを評価し、今回はそれに当たらなかった、これまでの否認=逮捕という人質司法の誹りを自ら正すものだとする評価もできないことではないと思います。また同時に、そしてそれ以上に可能性が高いのは、検察としては最後の最後まで不起訴の可能性を考えていたのだと思います。即ち、起訴は最終段階に決定したことであり、その時点ではさすがに逮捕するには期を逸したということだと思います。国税局との交渉に敗れたということです。私は、昨年2月の告発から長期間放置されていましたが、その間も検察は証拠を調べ、国税局と交渉をしていたと思います。それが完全ではないうちに検察が見切り発車で取調べを開始しなくてはならなかった事情があると考えています。それは、文藝春秋の笠間検事総長のインタビューを読み、数人の友人が彼は信頼できると直訴の手紙を送ったことによります。タイミング的に、一番最初の手紙は彼の目に触れた可能性があり、二番目以降のものはブロックされたのではないかと思います(経過報告33及び36)。いずれにせよ、逮捕の可能性は否認している以上、かなり高いものであり、私はその覚悟は常にしておりました。

嘆願書の内容では、多くの方が、私が脱税をしていない理由として「犯罪を犯してまで、そして親や子供を悲しませてまで経済利益を追求する奴ではない」あるいは「『ばれないと思っていた』とするのは余りに愚かに聞こえ、人物像と合わない。もっと賢明で思慮深いはず」ということを書いています。更に私は「私には合理的な動機がない」と加えさせてもらいたいと思います。

強盗や殺人といった犯罪と比して、経済犯の場合、動機というファクターは軽視される傾向があるようですが、常習犯ならいざ知らず、前科のない社会的地位のある人間が犯罪をするには、ある一定のバーを越える必要があると思っています。当然リターンは経済価値ですので、その経済価値がどれだけ重要であったかということだと思います。

「動機がない?だってお金が欲しいっていう動機あるんじゃないの?
「それでは自己申告をする人が全て脱税するのですか?」
「金額が違うよね。億だったらするかもよ」
「それは当時の私の年収相当分ですが、あなたは1年分の年収が得られるとして犯罪をしようと考えますか?私には金の卵を産むがちょうを殺してしまうような愚かな行為にしか見えませんが」
「絶対ばれないと思ってたらどうかなあ」
「脱税は所得そのものを隠して実現可能な犯罪だと思います。会社が税務当局に一言言えばばれてしまうようなことを『絶対ばれない』と思えますか?」

私は、借金に困っていたということも、ギャンブルや女性にお金をつぎ込んでいたということもなければ、また何か大きな買い物のためにお金が必要だったということもありません。負債といえるようなものは、毎月の目黒のマンションの家賃26万円と駐車場代くらいなものでしょうか。

当然、検察もそれらしい動機を作り上げなけらばならず、そのために証拠として提出すると思われるのが、私が作っていたエクセルのスプレッドシートです。私は、複数の銀行の口座や有価証券といった現金化可能な資産をスプレッドシートで一元管理していました。つまり彼らの意図は、いつも自分の資産状況を見てほくそえむ金に執着する人物像作りです。スプレッドシートに関する取調べでは、それをなぜ作っていたかと聞かれることはなく、「どのような頻度でアップデートしていたか」であるとか「何を契機としてアップデートしていたか」という、いわゆる証拠作りの取調べに終始しました。

私は子供の時からおばあちゃんっ子でしたが、その祖母が小渕首相が倒れた時とほぼ同時期に同じく脳梗塞で意識を失う重篤の状況となりました。そして彼女は結局意識を取り戻すことなく、完全植物人間の状態となってその3年後に死去しました。彼女が死に限りなく近づいた当時に、私も人間の死というものを強く意識するようになりました。私は持病は全くなく、健康そのものでしたが、事故死という可能性は常にあります。そして私が自分の死を意識した際、私が考えたことは「子孫に美田を残さず」でした。息子には悪いのですが、私が死ぬ際には最低限以上のものを残すことはないようにしようと思いました。遺言の書き方の本を読んだり、かかりつけの弁護士に遺言状・資産の管理の打診をしたこともありました。寿命を予期することは不可能ですが、準備はいつ始めても早すぎることはないでしょう。そのためにスプレッドシートを作り始めたものです。在職中には全く財テクには関心がなく保守的な運用しかしていなかったので、残高管理以上の大きな意味を持っていなかったスプレッドシートでした。今でも息子には、自分の道は自分で切り開き、経済的に自立した大人になるよう言い聞かせています。「俺は当てにすんな」と。どーも、まだ全然ぴんと来ていないようですが。高校生だと無理かなあ。

またツイッターで匿名に隠れて非難を受けることがあります。その一つが「外資系金融従事者は拝金主義」という主張です。その後には「だからお前の嘘は分かってるんだよ。もっとましな言い訳を考えろ」と続くのですが。私は、外資系金融に従事する者が金の亡者であるかのような議論には全く与しません。なぜならそうした人間は必ず淘汰されるからです。私は、ソロモン・ブラザース及びクレディ・スイスでは外国債券のトレーダーでしたが、クレディ・スイスでは外国債券営業部の部長を兼任し、ベア―・スターンズではトレーダーとしてではなく、その営業手腕を買われて債券営業共同部長として職に就いています。お客様も私たちが相応の給与を得ていることはご存知だと思います。そうした認識がある中で(逆差別と言ってもいいかもしれません)、信用を得るには下らない利己主義の人間は長続きはしません。イチローがメジャー・リーグで高給を得ているからといって、非難される必要はないはずです。野球の例をとるなら、日本球界に残ってそれを支えるもよし、より実力主義なメジャー・リーグで自分の実力を試すもよし、それは人生観の差です。外資系金融従事者を貶める「職業に貴賤がある」かのような下等な議論は唾棄すべきものとして、外資系金融従事者を代表して反論させて頂きます。

ということで、またまたつまんない経過報告を書いてしまいました。「漢字が多い!」「難しい言葉を使い過ぎ!」「長い!」とご批判を受けることもあるのですが、最後までお付き合いくださいありがとうございました。まだまだこんなもんじゃないですからね。覚悟しといて下さい。

P.S.
先日、西武池袋線痴漢冤罪小林事件の市民集会に参加した時の感想を加えさせて頂きます。話を聞きながら、「ふむふむ。俺も結構弁護士的な考え方ができるようになってきたかな」と思ったものです。例えば、痴漢犯罪者は被害女性の目の前に立って、後ろ手で膣に指を入れたとされています。普通、痴漢というのは(やったことがないのですが、想像するに)後ろからやるものだろうにです。そして後頭部しか見ていないので、顔からは小林さんが犯人かは分からないと被害者女性も捕まえた男性も主張しています。しかし、目の前に立っている男性が痴漢行為をしようとすれば体を密着してくるはずであり、後頭部しか見ていなくても、「髪の長さは?白髪はあったか?脂性?整髪料のにおいは?体臭は?」等々のイメージはあるはずです。つまり小林さんと誰かを取り違える可能性は低い。犯人を間違えることはない。そしてそれを(全く痴漢行為をすることが不可能である)小林さんであったと主張するのであれば、痴漢行為自体虚偽だったのではないかと思ってしまいます。女性とその捕まえた男性の関係は?女性に金銭的なトラブルや日頃から奇矯な行動はなかったか?と考えながら聞いていました。どうも痴漢行為が虚偽だという発想はあまり弁護団にはないように感じました。その可能性も検討の上、既に消去済みだったのかもしれませんが。

またその集会において布川事件の桜井昌司氏がお話しされました。彼とは「ショージとタカオ」の上映会で会って、握手をしてもらってからの再会でしたが、彼は覚えているはずはありません。彼の話の中で、「小林さんを実刑1年10ヶ月で収監される時に見送ったけれども、できるなら自分が代わりに入ってあげたいと思った」と言っておりました。いつもユーモアをもって話す彼の言葉を会場も冗談と受け取ったと思いますが、私は結構本気だろうなと思ったものです。同じ牢獄に入る場合でも、実際に犯した犯罪行為を償うために入る場合と冤罪で入る場合、そしてこの場合は、冤罪の救済者としてヒーローとして収監されるのであれば、全く心持は違うだろうということです。それだけ冤罪は辛いということを彼は知っているのだと思います。そして、今は私もその気持ちが少しは分かります。

12/13/2011


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category: クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

2011/12/13 Tue. 01:41 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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