「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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経過報告改め #検察なう (74) 「クレディ・スイスへの差別」12/16/2011 

経過報告改め #検察なう (74) 「クレディ・スイスへの差別」12/16/2011


多くの方にツイッターをフォローして頂きありがとうございます。一人一人の方々にお礼を言いたいところですが、ブログでお礼を言わせて頂きます。

今回の件で、私が残念だと思うことは多々ありますが、その一つが、もし私がクレディ・スイスの人間でなければ、こうしたことにはならなかったということです。これは金融関係者であれば納得できることですが、一般の方には若干説明が必要かと思います。

私がクレディ・スイスに入社したのは2001年ですが、クレディ・スイスはそれに先立つ1998年に損失先送りを目的とした不正取引で業務停止処分を科せられています。当時、不正取引をした会社はクレディ・スイスだけではなかったのですが、金融庁の逆鱗に触れたのは検査忌避の行為でした。私が入社した時に、当時の事を知る者の中に、面白おかしく「あの頃、事件に関係した書類を隠す小部屋があって、みんなは『サティアン』と呼んでいた(オウムのあれです)。強制捜査という段になり、その書類を全てシュレッダーにかけた」とその頃の状況を語る者もいました。これは業務改善命令どころではなく、業務停止処分を食らうべき処分相応の犯罪行為であったことは明らかです。私は、看板で商売ができたソロモン・ブラザースから、東京においては前科者扱いのクレディ・スイスに入社し、お客様の信頼を得るため随分苦労したものです。そしてその当時のクレディ・スイスは、「あつものに懲りてなますを吹く」状態で、コンプライアンスに関しては異常に神経質でした。そうした会社ですら、税務指導が行き届かなかったというのは、会社を弁護するならば、やはり税制に不備があると言わざるを得ないと思います。会社の名誉のために言っておきますと、クレディ・スイスのそうした汚名は全く東京マーケットにおけるものだけで、日本を除く全世界においてはむしろ高い評価を得ている会社だと言えます(私が入社した一番の理由がそれです)。

外資系証券会社各社に一斉に税務調査が入った際、複数の会社から多数の海外給与申告漏れが発覚することとなり、一罰百戒を意図して誰かをつるし首にする必要がありました。そして、当局の覚えが極端に悪いクレディ・スイスがターゲットにされたことは、過去の経緯を知る者にとっては何ら違和感がないものだと思います。そして、過少申告であった者の中で、単純に過少申告の金額が一番多かったのが私ということです。

私は国税局査察部の強制捜査を受けた後、15ヶ月も無実を主張し彼らと戦いましたが、結局昨年2月に刑事告発されました。私が納得できなかったのは、個人の脱税という余り社会的に意義も高くない事案で、国税局自ら「証拠はない」と認めながら、なぜ冤罪を作ってまで意固地に私を刑事告発しなければならなかったのかということでした。日刊ゲンダイの記事を書いた、当時テレ朝の記者であった田中周紀氏と告発直後に会うことになった際、私の言葉を聞いて、彼には私の無実を理解して頂いたと思いましたが、氏の言葉は「八田さん、残念ですが、いかに無実であったとしても、この後起訴、そして有罪は動かないと思いますよ。それが既定路線ですから」というものでした。その既定路線というのは、「外資系証券から多数海外給与の申告漏れが出ているが、これは全くけしからんので、誰か見せしめにしなければならない。それは品行がよくないクレディ・スイスからいけにえを出すべきで、故意・過失に関わらず金額が一番多い者が世間が納得する標的だ」というものです。

こうした論理は、部落差別のようなもので、全く下等かつ劣悪なものです。それに凝り固まった結果、強制捜査から14ヶ月もかけて告発、それから22ヶ月もかけて起訴というのが国家権力の出した答えです。誰も被害者がいない事件にかける労力としては異常なものです。もし、「税金徴収は国民の生活を支える基盤であり、それを脅かす行為は、国民全体が被害者といえるものだ」という議論があれば、私は前半部分は納得しますが、後半は全く首肯できないものです。なぜなら、ここまで国税局・検察が捜査にかけてきたコストは膨大なものであり、彼らこそが血税を浪費しているからです。

私はクレディ・スイスに在籍した当時の経験から、会社が今回の一件でいかに怯えているかが手に取るように分かります。誰の目にも彼らのコンプライアンス違反であるのは明らかなのに、それをネタに国税局に脅され、私を悪人にするために汲々として「捜査協力」しているのは本当に哀れです。私は告発後に、既にクレディ・スイスを退職した者と「会社は、在籍組に私には一切協力するなと言っている。彼らはどういう気持ちでいるんだろう」と尋ねたところ、「大多数の人間は迷惑に思ってますよ。八田さんのおかげでまたクレディ・スイスの汚名が繰り返されてるわけですから」と言われました。全くもってピントはずれなのは、もし私が正しく申告していたところで、次に金額が多い者がスケープゴートにされただけで、何も結果は変わらないのにということです。「俺だから会社に矛先を向けないで、そもそもの無法な行為を犯している国家権力に矛先を向けて戦ってるんだろ」という悔しい気持ちは彼らには届かないのだろうと思います。

一罰百戒が間違っているわけではありません。それは効率論から、あるべき行動でもあります。しかし、その効果を期待するには、その戒めるものがまず「一戒」であって初めて一罰百戒となるべきです。そしてその一戒が適切な法的手続きに基づかなければ、全く一罰百戒の効果は得られないものだと思います。

捜査権力のこうした恣意的な国家権力発動は公訴権の濫用というべきものです。彼らは間違った論理で無実の者を罪に陥れようとしています。これに関しては、私個人の問題という以上に、国民全ての利益を損ねるものだと強く抵抗したいと思っています。

今後ともご支援のほどよろしくお願いします。

12/16/2011

category: クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

2011/12/16 Fri. 09:06 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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