「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (467) 「取調べ可視化が目的化することのリスク」 5/7/2015 

#検察なう (467) 「取調べ可視化が目的化することのリスク」 5/7/2015

先日、「刑事訴訟法等改正法案をどうみるか」院内集会に参加しました。

ここをクリック→ 4・22院内集会チラシ

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(写真は小池振一郎弁護士、郷原信郎弁護士、袴田秀子氏)

取調べ可視化義務付け等を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」がこの3月13日、政府により国会に提出されたことを受けて、その問題点を野党議員にアピールする市民集会です。

この刑事訴訟法等改正法案は法制審議会の特別部会(「新時代の刑事司法制度特別部会」)の審議を経て作成されたものです。

そもそもは郵便不正事件の検察不祥事をきっかけに、冤罪を繰り返さないよう、捜査権力の角を矯めるための議論が始まりましたが、「検察の在り方検討会議」「新時代の刑事司法制度特別部会」の審議を経て、ふたを開けてみると、わずか2-3%の事件の取調べ可視化とバーターに、司法取引の導入や通信傍受の対象拡大という更に強力な武器を捜査権力は手に入れたことになります。さすが法務・検察官僚のしたたかさ、ずる賢さには脱帽せざるを得ません。(注1)

3月13日の法案国会提出を受けて、日弁連会長が改革の前進を評価する声明を出していますが、「は?どうしちゃったの?」というのが正直な感想です。

ここをクリック→ 取調べの可視化の義務付け等を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」に対する会長声明

こうした一連のいきさつを眺めると、法務・検察官僚のいいようにされているのは、取調べ可視化が目的化したことの弊害ではないかと感じます。

取調べ可視化自体は、被疑者あるいは弁護人に一方的に資するものではなく、単に取調べの客観性・任意性を担保する手段に過ぎません。取調べを可視化しさえすれば世の中がバラ色になるかのような幻想を持つ者はよもやいないとは思いますが、それを何とか実現しようとするあまり、狡猾な法務・検察官僚に付け込まれたというのが、私の印象です。この問題に関し、一枚岩でない日弁連と、組織を挙げて保身及び形勢逆転を狙う法務・検察官僚とでは、やはり役者及び気合が違ったというところでしょうか。

先日の集会に参加していて、更に感じたところを述べます。

パネリストは、冤罪界の大立者である布川事件の桜井昌司氏と、西武新宿線痴漢冤罪事件(「西武新宿線第一事件」)被害者の矢田部孝司氏(映画『それでもボクはやっていない』は複数のモデルがいますが、彼はその一人)でした。彼らの実体験に基く取調べ全面可視化の必要性の主張は説得力がありました。しかし同時にふと思ったことは、同じ主張が犯罪者からされたとして同じく心に響くだろうかということでした。

「あまりに取調べが拷問のようで、人権なんてないんです」
「でも、あなたは人を殺したんですよね」
「はい、でも、それって推定無罪原則を無視してませんか?」
「ではその取調べが、それほど過酷でなければ自白しましたか?」
「それは分かりません。嘘をつき通したかもしれません」
「なら仕方ないですね」

否認する被疑者が、真実無実を訴えているのか、あるいは嘘の自己弁護をしているのかは、取り調べ段階では分かりません。犯罪者がひどい取調べを受けるのは仕方ないと思ってしまうとこの問題は迷路に迷い込むことになります。

「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ」ということが本当に理解できてこそ、取調べの可視化の意義が理解できるように感じました。

また取調べの録音・録画そのものが証拠資料とされた場合の弊害はあまり議論されていないように思います。

先日の愛知弁護士会での講演の際(注2)、コーディネーターであった弁護士と最近の取調べ可視化の状況について会話を交わした時のことです。

私 「取調べの可視化が行われて、何が変わりましたか」
弁 「いやあ、本当に大変なんです。時間が取られて。取調べの録画テープは何十時間分もありますから。反訳があればまだしも、検察に「ない」と言われると本当に困ってしまいます」

員面調書や検面調書の恣意性が「彼らの作文である」と問題にされることがよくありますが、もし彼らが取調べの可視化を利用して、調書の代わりに録音・録画そのものを実質証拠とすれば、刑事弁護人の業務はパンクしてしまうことを意味します。「お前らの望み通り、取調べを可視化してやっただろうが」と肉を切らせて骨を断つ作戦です。

「取調べの可視化」という場合、調書の補助的な位置付けであることをイメージしますが、狡猾な検察官であれば、弁護人いじめとして、膨大な量の録音・録画を実質証拠とすることが考えられます。調書であれば読むのに4-5時間というところが、録画DVDを見るのに100時間ということがあり得るということです。

録音・録画のみを実質証拠とすることは禁止するであるとか、それらのみを実質証拠とする場合には必ず反訳を添付するといった方策が取られるべきだと思います。

いずれにせよ、刑事司法改革の道のりは依然遠くて険しいということが言えそうです。それでも冤罪被害者を生み出さないための改革を進める不断の努力が必要だと感じています。

(注1)
ここをクリック→ 法制審議会の試案を「泥棒に追い銭」と評価する青木理氏(TBSラジオ『デイキャッチ』2014年5月1日放送)

(注2)
ここをクリック→ #検察なう (460) 「愛知県弁護士会主催「3・7取調べの可視化市民集会」講演全文」

5/7/2015













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category: 刑事司法改革への道

2015/05/07 Thu. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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