「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (478) 「名張毒ぶどう酒事件弁護団、第9次再審請求で新証拠を提出」 7/2/2015 

#検察なう (478) 「名張毒ぶどう酒事件弁護団、第9次再審請求で新証拠を提出」 7/2/2015

この5月に、名張毒ぶどう酒事件冤罪被害者奥西勝氏は第9次再審請求を行いました。

ここをクリック→ #検察なう (473) 「名張毒ぶどう酒事件第9次再審請求と6・25集会」

そのブログで紹介した市民集会に参加してきました。

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その集会では、まず映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(注1)の上映がありました。私は4回目の観賞でしたが、映画としてもよくできた作品であることを再確認しました。やはり仲代達矢氏と樹木希林氏の存在は大きいと感じました。

映画上映後、映画の原作『名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の半世紀』の著者の一人である門脇康郎氏の講演がありました。

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ここをクリック→ ブック・レビュー『名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の半世紀』

門脇氏は、東海テレビのカメラマンでしたが、奥西氏が控訴審で逆転死刑判決を受けた判決文のひどさに憤り、それから私費を投じてこの事件を個人的に追い続けました。彼の、正義を求める信念の強さと奥西氏家族を思いやる気持ちには心打たれるものがありました。

講演後、彼と話す機会がありましたが、私のした質問の一つは映画に奥西氏の妹が登場しない理由についてでした。彼の答えは、彼女も兄を思う気持ちはあるものの、自分の子供のことを考えると表に出られないというものでした。冤罪は被害者本人だけではなく、周りの家族の生活も破壊するものだとあらためて感じました。

その後、特別面会人の稲生昌三氏の挨拶がありました。たまたま当日の朝、奥西氏と面会をしてきたそうです。病床にいる奥西氏の容体は芳しくないことも多く、面会の叶わないこともしばしばだそうですが、その日は奥西氏の容体も安定しており面会できたとのことでした。

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彼の前回5月22日に行った面会の模様を報告する「面会通信」を添付します。
ここをクリック→ 「無実の死刑囚・奥西勝さんを励ます面会通信 No.287」

その後、弁護団により第9次再審請求に関しての報告がありました。

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まず伊藤和子弁護士(注2)から、これまでの再審請求の流れと、新証拠の開示を求めているもののままならない状況が伝えられました。再審における証拠開示に関しては、通常審とは違う問題があり、この点に関しては別の機会に取り上げてみたいと思います。

次に古橋将弁護士から、唯一の物証である王冠についての説明がありました。第5次再審請求の時点で、王冠についた歯型が奥西氏によるものではなく、鑑定の画像は適合するように倍率を変えて捏造されたことが弁護団から主張されています。その時点の裁判所の判断は、「奥西死刑囚の歯型と断定できなかったとしても、人の歯型である以上、ある程度の証明力がある」という頓珍漢な論理でうやむやにされたものです。弁護団は現物の開示を求め、再鑑定を試みようとしています。

その次は脇田敬志弁護士から、自白の信用性について弁護団が立証に努めている点が説明されました。それは、奥西氏の自白にある、①犯行前夜、暗闇の竹やぶの中で農薬を入れる竹筒を作成し、農薬を注入した、②その竹筒に新聞紙で栓をし、上着ポケットに入れて栓を濡らすことなく運搬した、③王冠の開栓を、まず外ぶたを火ばしではずし、中ぶたを歯でこじ開けたとした点です。弁護団は学生30人を使って、それぞれの実験をしましたが、①②③の全てをできた学生は一人もいなかったことから、自白の信用性に疑問があるという主張でした(但し、それぞれどれかのみをうまくできた学生はいたようです)。

最後に野嶋真人弁護士から、今回の再審請求の中心となる新証拠の説明がなされました。

まずは凶器の農薬に関してです。自白では「ニッカリンT」という奥西氏が購入したことが証拠上明らかな農薬が殺害に使われたとされました。弁護団は、第7次再審請求で、実際の犯行に使われた農薬は、同じ有機リン系農薬(テップ剤)であるが違う農薬(「三共テップ」という農薬である可能性が高い)であるという鑑定結果を提出しました。そしてそれは一旦、再審開始決定の鍵となりましたが、検察異議申立を受けた異議審では、ニッカリンTであったとしても矛盾しないという非科学的な裁判官の独自の解釈で再審開始決定が取り消されたという経緯があります(注3)。

この凶器とされたニッカリンTは、1961年の時点で既に、実際に使われた農薬とは違う可能性が示唆されています。それはニッカリンTに含まれる不純物が、ペーパークロマトグラフィーで検出されなかったからです。それは検察の「不純物が加水分解することもありえる」という、これまた非科学的な独自の解釈を裁判官が採用し、ニッカリンTが凶器とされた農薬ではないとは認定されませんでした(注4)。

今回の再審請求では、弁護団は、今日では時代遅れともいえる鑑定法のペーパークロマトグラフィーを再度行い、ニッカリンTが犯行に使われた農薬ではないことを立証しようとしています。

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第7次再審請求において最新技術の鑑定方法結果が裁判官に採用されなかったのは、彼らがそれを理解できなかったからであり、中学の理科の実験で使われるレベルの内容であれば理解できるであろうという、それはそれで説得力のある主張でした。

更に興味深かったのは、ぶどう酒瓶の封緘紙の分析でした。弁護団は、封緘紙の糊づけされた部分に、ほかよりも濃く変色し、隆起した部分を見つけています。当時、犯行に使われたぶどう酒の封緘紙は、「CMC糊」という半合成糊で接着されていましたが、弁護団の主張は、「犯人は、開栓のため封緘紙をはがした後、CMC糊ではなく、一般家庭によく使われる「フエキ糊(でんぷん糊)」で接着したと考えられ、その部分が隆起、変色した」というものです。よくもそこまで細かな証拠を探し出したと感心しますが、そのポイントは、奥西氏が全く自白で述べていない「無知の暴露(真犯人しか知りようがないため、虚偽自白では述べられることがない事実)」であり、真犯人の行動を類推したアナザ―・ストーリーという点で評価できるものと思います。

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第9次再審請求の判決は、第8次再審請求を棄却した同じ裁判体とのこと。状況は厳しいとはいえ弁護団の最後まで(それどころか、この先奥西氏の無罪を得るまで未来永劫)諦めない真剣度が伝わってきました。

今後も名張毒ぶどう酒事件の再審請求の状況には注視する必要があります。

FREE OKUNISHI!!

(注1)
ここをクリック→ #検察なう (278) 「映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』観賞」

(注2)
ここをクリック→ 伊藤和子弁護士 「名張毒ぶどう酒事件 89歳になる死刑囚の救済の道を閉ざす高裁決定は正義に反する。」

(注3)
ここをクリック→ 「科学的証拠の無視と自白偏重~名張毒ブドウ酒事件第7次再審請求最高裁特別抗告決定」矢澤昇治弁護士

(注4)
ここをクリック→ 日々是好日「名張毒ぶどう酒事件と農薬鑑定に使われたペーパー分配クロマトグラフィー」

7/2/2015






















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category: 名張毒ぶどう酒事件

2015/07/02 Thu. 01:52 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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