「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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「死刑制度について考える(17)~検察庁における死刑」 

「死刑制度について考える(17)~検察庁における死刑」

死刑制度が法的に認められている以上、そして罪科の求刑が検察官の職務である以上、必要相当と認められる場合、検察官は死刑を求刑することになります。彼らの心持ちはどのようなものでしょうか。

その状況に直面した検察官一人一人の心に去来するものは違うでしょうが、彼らも人間であり、いかに職務とはいえ、人の命を奪う責任の重さに複雑な心境になることは間違いないと思われます。

ところが、検察庁ではありませんが、先週、警察庁の金高雅仁長官が、記者クラブにおける会見で、特定危険指定暴力団工藤会への対策について「組織のトップを死刑や無期懲役にもっていき、二度と組に戻れない状態をつくり、恐怖による内部支配を崩していこうという戦略。徹底した捜査を遂げるということで臨んでいる」という発言をしたという報道を目にし、愕然としました。行政機関の一つである警察庁の長が、司法プロセスを全く無視し、極刑適用を企図して行動しているという感覚の鈍磨には国民の一人として危機感を覚えます。

ここをクリック→ 西日本新聞(6月30日付)「トップを死刑や無期懲役に」異例の極刑言及 警察庁長官、工藤会壊滅へ決意

検察庁が死刑求刑に関してどのように考えているか、そのヒントになるコメントを、元検察官の市川寛氏が、彼の著書『検事失格』余話として、「#検察なう」フェイスブック・コミュニティに書き込んでくれました。その一部を以下に引用します。

『検事失格』余話 「検察庁における死刑」

拙著にも書いたとおり、私は死刑にあたる事件の主任として捜査をした経験もなければ、公判で死刑を求刑したこともない。 同期や後輩には、早ければ任官3年目くらいで死刑求刑をした人もいる。

ただ、荒っぽくいうと、死刑求刑が予測されるのは多くが強盗殺人。なにしろ法定刑に死刑と無期懲役しかない。なので、この罪名にあたると死刑を視野に入れながらの仕事になる。もちろん、死刑は強盗殺人に限らない。放火が絡んだり、保険金が絡んだり、あるいは二人や三人ではすまない数の人を殺してしまった場合、単純殺人でも死刑求刑をすることはあり得る。
 
ところで、少なくとも私がいた頃の検察庁では、死刑と無期懲役を求刑する場合は、地検だけにとどまらず、高検の決裁も経なければならなかった。おそらく今もそうではないだろうか。

私は、先輩が高検に死刑求刑の決裁を受けに行くときに同行したことがある。控訴審議でも似たような場面があるが、この求刑決裁でも高検のヒラ検事が「あの証拠はあるのか、この事実は解明しているのか」とそれこそ私からすれば重箱の隅をつつくような指摘を矢継ぎ早にしてきた。その多くはこちらの予測を超えるものではなかったが、例によって私はうんざりした。うんざりしたのは私のいい加減な執務態度によるところが大きかったとは思うが(爆)、この事件は強盗殺人で、しかも殺された被害者が複数いたことにもよる。先に述べたとおり、この罪名で複数の人間が殺されていたら、「死刑以外に何がある?」というのが検事の感覚だ。

もっとも、この感覚に甘えて捜査の詰めを誤ってはならないのは高検の連中の言うとおりである。それでも私は内心「ぢゃ、無期懲役にするってんですか?」と苦々しく思っていた。私はこうした事件に限らず、検察庁、ひいては日本の刑事司法全体に対していったいどこまで細かい事実を調べ上げればいいんだ?という疑問を持ち続けていた。これは今でも変わらない。むろん、強盗殺人が認められ、さらに複数の人が殺されていたら自動的に死刑、というのは乱暴だろう。しかし、だからと言って不可能に近い立証を強いるのもおかしい。検事も生身の人間なのだから。
(中略)

検察庁を弁護するように思われるだろうが、死刑(または無期懲役)求刑をするときは、「石橋を叩いて渡る」姿勢が徹底されるのだ。「これ以上は証拠を集めることはできない、これ以上の事実を調べ上げることはできない」というところまで、それこそどぶ板をひっぺがすような立証、それも情状立証を尽くさないと、無期懲役、死刑の決裁が下りない。もちろん、これは検察庁の自己満足でもあろう。

逆に言うと、地検と高検の厳しい決裁を突破しての求刑であるからには、判決で死刑が無期懲役に、無期懲役が有期懲役に落とされたときは、「原則として」否「ほぼ」控訴である。少なくとも高検まで出向いての吐き気のするような控訴審議は必至だ。検察庁がまさしく組織をあげて徹底的に考え抜いた上での求刑であるからには、それを否定された場合に「あ、そうですか」と引き下がるわけにはいかないわけだ。

このように、死刑、無期懲役という刑罰は、求刑しようとするだけで桁外れのチェックを経ているので、たかが主任の義憤や正義感といった代物を根拠には絶対に科すことができない。考えようによっては、死刑と無期懲役に対しては、検察庁の中でも非常に謙抑的な姿勢が保たれているとも言えるかもしれない。あるいは、検察庁ですら、それなりに及び腰になって求刑する刑罰という意味では、語弊があるかもしれないが、死刑と無期懲役はそれだけ厳粛な刑罰と言ってもいいかもしれない。
(後略)

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「死刑と無期懲役に対しては、検察庁の中でも非常に謙抑的な姿勢が保たれている」というのが市川氏の検察内での感覚だったようで、先の警察庁長官の言葉とは随分と隔たりがあり、「そうでなくては」と安心させられます。

そして、これが普通の事件ではなく、世の中で話題となった事件、世論が死刑を望んでいるかのように報道で書き立てられている事件でもそうなのかどうか(具体的には「光市母子殺害事件」のようなケース)、世論に迎合して検察が死刑求刑に前のめりになることはないのかは興味深いところです。



















ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1




ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

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category: 死刑制度について考える

2015/07/06 Mon. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

存在だけで罪に値すると考えている

普通、行為として犯した罪があるからそれに対応して罰が存在しますが、こと暴力団に限れば私は警察の考え方として存在自体が罪くらいに考えているのだと思います。

とある検事が「外国人と暴力団に人権など無い」と言っていたそうですが、この考え方がそのまま当てはまると思います。ある意味、暴力団は現代日本における被差別層ではないでしょうか。

既に暴対法と暴排条例で相当な人権的制限が行われており、所謂暴力団に所属している人たちは普通に銀行口座も作れないしアパートやマンションの賃貸契約も困難を極めます(身元を隠して契約すれば、詐欺で摘発される恐れがあるからです)。ここまで来ると、さすがに憲法違反の恐れが強いと思いますが、そういった批判はマスコミ側から殆ど聞きません。

かつてナチスがユダヤ人に対して様々な人権蹂躙をやりましたが、それに比べればまだかわいいものの、違憲の疑いが濃い行政行為を行政当局が堂々をやる様になった事実は大変重大だと感じています。

今のところ、暴力団に限定してやってますが、政府の「反社会的団体及び個人」の定義がいつ変わりかわかったものではありません。政府が何らかの状況、事件をきっかけとして豹変し人権弾圧の範囲を広げた時、はたしてこの国の国民はどれだけ対抗できるのかとふと考えました。

Tri #6Aros7K. | URL | 2015/07/06 Mon. 04:48 * edit *

架空刑事裁判で実刑

高裁でも事実調べがされず即日結審となり、弁護人の上告の意思を伝えたところ「こんなのやるだけ無駄、金はあるか」また押収証拠品の処分を執拗に勧めた、もちろん再審請求に向けての保管を伝えたが、この奇怪な弁護人の言動が服役生活を更に不安にさせた。

服役中に無罪証拠の隠滅をした検察庁
http://www.suihanmuzai.com/index3/150622.jpg.html

盗み読みした虚偽告訴人の供述調書
http://www.suihanmuzai.com/110822.jpg.html

遂犯無罪 #1S0t/Q7o | URL | 2015/07/11 Sat. 22:24 * edit *

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