「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (480) 「法務委員会で審議される「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(1)」 7/13/2015 

#検察なう (480) 「法務委員会で審議される「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(1)」 7/13/2015

現在、1月26日に召集された第189回通常国会で審議される議案の一つに、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」があります。

この刑事訴訟法改正による我々の日常生活に対するインパクトは、安保法案よりもあると理解していますが、なかなか国民の関心は高まらないようです。

ここまでの流れをおさらいします。

郵便不正事件を受け検察批判が高まる中で、刑事司法改革の要請が高まり、まず法務大臣の諮問機関である「検察の在り方検討会議」が2010年末に発足しました。その審議を経て「検察の再生に向けて」と題する提言がなされました(注1)。

次に編成されたのが、2011年6月法務省に設置された「新時代の刑事司法特別部会」という名称の法制審議会でした。3年に亘る審議を経てまとめられた答申(注2)は、議論のスタート時に見込まれた方向とは似ても似つかぬものに仕上がっていました。「名は体を表す」とはよく言ったものです。そもそも検察改革のために検察の在り方を検討する議論だったものが、結局は新時代の取調べ手法、即ち捜査権力の権力拡大につながっていました。

改革の目玉とされたのは取調べの可視化でしたが、施行範囲を裁判員裁判対象事案及び検察独自捜査事案に限定という結論では、刑事事件の2%しか取調べが可視化されないことになります(しかもそこには捜査権力の恣意的な運用を許しかねない例外規定が設けられています)。そしてそのバーターとして、捜査協力型の司法取引の導入と盗聴法拡大が盛り込まれたのが、特別部会の答申でした。法制審議会の答申は包括裁決、つまりパッケージ・ディールとして、多岐に亘る刑事司法制度改革で、例えば「取調べ可視化は賛成だが、司法取引導入・盗聴法拡大には反対」という票は投じることができなかったということが一つのポイントです。

捜査権力の角を矯めるために始まった議論が、結局焼け太りで終わりそうだというのが一連の流れです。法務官僚のしたたかさには、今更ながら驚かされます。

この答申に基づく法律案は国会に提出され、現在は衆議院法務委員会で審議されているところです。法務委員会は衆議院・参議院それぞれに17ずつ設置された常任委員会の一つです。国会議員は、どれかの常任委員会に所属します。法律案はまず常任委員会において過半数の委員の賛成により可決されなければならず、委員会を通った法律案が本会議に回され、そこでの採決を受けることになります。

7月に入ってから、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」に係る法務委員会は3回行われています。そこでは参考人が呼ばれ、それぞれの意見を陳述しています。

その内容は衆議院インターネット審議中継で見ることができます。1回の審議は約3時間に亘るものですが、この動画配信のよいところは、発言者ごとにリンクを飛ばして見ることができることです。つまり3時間のうち、見たい部分だけ見ることができます。

今回のブログ以降、この法務委員会の動きをフォローしてみたいと思います。初回の今回は7月1日分です。

リンクはこちら。
ここをクリック→ 衆議院インターネット審議中継 ビデオライブラリ 法務委員会(7月1日開会) 

主に捜査協力型司法取引導入を審議するため、この日呼ばれた参考人は5人。肩書とともに法案に対するスタンスを付け加えておきます。

高井康行 (弁護士) 「賛成」
川出敏裕 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) 「賛成」
郷原信郎 (弁護士) 「法案は問題あり」
笹倉香奈 (甲南大学法学部准教授) 「断固反対」
今村核  (弁護士) 「断固反対」

この日以外の法務委員会でもそうですが、法案に賛成とする参考人の意見は、捜査権力側利益の代弁者であり、彼らの論法がいかなるものかの参考にはなるものの、問題点の指摘がなく、さして面白みがないので、お時間のない方は飛ばしてもよいと思われます(勿論、見る方がよいのですが)。そして参考人の意見陳述より面白いのが、法務委員会の委員である各議員の質疑です。

この日の3時間の中で一部分だけ見るとすれば、是非井野俊郎氏(自由民主党、群馬2区、弁護士)の質疑の21分をご覧下さい。

彼のした主な質問は3つ。

① 被疑者の自白がなかなか得られなくなっている(だから新たな捜査手法の導入が必要)とされているが、それは捜査権力の取調べ能力が落ちているのか。

② 自白による量刑の軽減では反省をしているということが勘案されると理解しているが、捜査協力型司法取引では、他人の罪を告白することは反省しているわけではないのに、なぜ自分の罪が軽減されるのか。

③ 司法取引においてその供述内容がただ単に自分の罪を軽くするための虚偽ではないかと疑われる場合、弁護人の姿勢はどうあるべきか。

①の質問に対して答えた、ヤメ検弁護士の高井氏の「若手検察官の取調べ能力が落ちている」という発言を現場の検察官はどのように聞くのでしょうか。「そりゃ、あんたの時代は相当無茶やってたんじゃないの」と思うのではないでしょうか。

そしてその後の彼の言った「どのようにして嘘の自白に騙されないようにするか」という言葉は非常に重要なものです。この発想、思考回路は、法制審議会において警察・検察関係者が何度も持ち出した論理で、過去の冤罪における虚偽自白は、取調べが不適切だったわけではなく、ただ取調官が騙された、だからそれを防ぐためにより強力な取調べ手法が必要だとするものです。冤罪を作り出すことに全く反省のないこうした論理がまかり通っている以上、検察改革・刑事司法改革の道ははるか遠いと言わざるを得ません。そして世の中には、彼のように検察組織を離れながら、古巣にパラサイトしている一部「ヤメ検」がいるということの表れです。

その後の(同じ「ヤメ検」ですが、明らかに高井氏とは立ち位置の違う)郷原氏の発言の方が誠実であり納得感があります。

②の質問は「なかなかグッド・クエスチョンだな」と感じました。川出氏の回答はそつないものです。

③の質問は、弁護士3人に対しなされたものですが、高井氏の後を受けて発言した郷原氏の回答は実に痛快で、検察に寄りそう「ヤメ検」をばっさり斬り捨てています。是非、ご覧になって下さい(ちなみに郷原氏の後ろでメモを取っている白いジャケットの女性は、私の国賠審の代理人チームに郷原氏のサポートとして入ってくれている新倉栄子弁護士です)。

参考人の意見の中では、笹倉香奈氏のものが一番有益でした。アメリカの現状において、捜査協力型司法取引の危険性を実に明快に解いています。冤罪を減らすための刑事司法改革であるはずが、むしろ今より冤罪を作るようでは、本末転倒ではないだろうかと考えさせられるものです。

(注1)
ここをクリック→ 法務省HP「検察の在り方検討会議」

(注2)
ここをクリック→ 「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果(案)」

7/13/2015






















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category: 刑事司法改革への道

2015/07/13 Mon. 03:14 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

堀江氏の見識の高さ

彼はこの司法改革問題の方が安保より大事だとコメントしていましたが、私も同意見です。

日本の司法制度はアメリカのそれを比べ、かなり異質です。弁護士が取り調べに同席できない、検察官の証拠独占、裁判官の保釈制度の運用(否認していると保釈されない)等、アメリカの弁護士ならひっくり返ってしまう様な、被告人に対して圧倒的不利な運用がされています。

そんな国で、アメリカの法執行機関が許されている様な過激な捜査手法を認める等、愚策にも程があります。

まあ、plea bargainまでは被告側にも訴追側にもメリットがありますので許せるとして、密告型の罪軽減や捜査協力の報酬としての軽減は、実際に運用しているアメリカでも相当事故があります。負の側面としては、特に組織犯罪において密告の可能性有りとボスが判断すれば、司法取引の制度で自己の救済を図る可能性を鑑みて、殺害されるケースも有ります。

日本のオレオレ詐欺とヤクザの様な反社会的組織に当てはめれば、これまで関係者を軽く脅す程度で済んでいたものが、ボスの自己防衛の為により積極的に「行方不明」にされたり、殺害される様になるでしょう。

また、捜査に協力した人物の保護についても非常に気がかりです。裁判で不利な証言をした人物は後日危害を加えられるケースがありますが、この制度で罪を逃れた人物(従犯)は高い確率で不利な証言をされた側(主犯)の恨みを買います。協力者保護、証人保護もセットで必要です。

これらの要素を鑑みるに、そう簡単に運用できる代物では無い事は明白です。捜査当局としては自分たちの仕事をしやすくする便利な道具を手に入れる事ができて嬉しいでしょうが、確実に導入後に様々な形で弊害や被害で出始めます。これはそういう劇薬の類です。

恐らく簡単に法案は成立してしまうでしょうが、後日高い確率でこの凶悪な刃は通した政治家の先生たちにブーメランの様に帰ってくるでしょう。そのとき後悔しても遅いのですが・・・

Tri #6Aros7K. | URL | 2015/07/15 Wed. 23:26 * edit *

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