「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (481) 「『Daily Diamond』記事 前田恒彦氏「安保法案の影で静かに審議が進む刑事司法改革法案に思うこと」 」7/16/2015 

#検察なう (481) 「『Daily Diamond』記事 前田恒彦氏「安保法案の影で静かに審議が進む刑事司法改革法案に思うこと」」 7/16/2015

7月10日配信の『Daily Diamond』(『週刊ダイヤモンド』のWeb限定版)の記事の一つが、元大阪特捜部主任検事の前田恒彦氏によるものでした。題して「安保法案の影で静かに審議が進む刑事司法改革法案に思うこと」。前回のブログ(注1)で紹介したように、この刑事司法改革法案は、現在、衆議院の常任委員会の一つである法務委員会で審議の真っ最中です。

前田氏とは以前に大阪のオクトーバーフェストでお会いし、その後名古屋の講演でご一緒したことがあります(注2)。大阪でも名古屋でも、酒を交わしながら、大いに刑事司法改革論議で盛り上がったものです。

記事のリンクはこちら(この記事を読むには、『週刊ダイヤモンド』本誌目次に記載のパスワードを入力する必要があります)。

ここをクリック→ 『Daily Diamond』 「元特捜部主任検事のざわめき」

要点をかいつまんで説明します。

今回の記事の前書きは、
「何かと話題の安保法案と比べると地味で目立たないものの、今国会ではいずれ国民生活に重大な影響を与えることとなる刑事司法改革法案の審議も着々と進んでいる。改革の元凶となった張本人として多方面からこの法案に対する見解を求められていることから、この機会に思うところを示したい。」

自ら「改革の元凶となった張本人」と総括していることからも、自身の発言の重みを理解していると感じます(郵便不正事件に関しては、彼は実行犯として実刑判決を受けていますが、私は個人的に、彼は検察の行動原理に則って行動したものであり、結局、事件を矮小化しようとした検察組織による「とかげのしっぽ切り」だったと感じています)。

冒頭、彼は検察の在り方の問題点を端的に指摘しています。その問題点とは、
「犯罪という表に出にくい水面下の不正行為を暴き出して国家の治安を維持するのはほかならぬ我々であり、その判断や権限行使には絶対に間違いなどあり得ないという無謬神話に酔いしれ、謙虚さを欠いた捜査当局の独善的な正義感」
です。

ここでのキーワードは「国家の治安を維持する」「無謬神話」「独善的な正義感」です。インサイダーが、外に出て観察した結果の記述ゆえ、これ以上正確な評価はないものと思われます。傾聴に値します。

続けて、具体的にその問題点を説明しています。

「密室である取調べ室で関係者から得た供述や当局によってプラスとなる証拠物を金科玉条のものとし、いったん組み立てた事件のストーリーに組織を挙げて固執し、不都合な事実や証拠に目をつぶり、あるいは出来る限り表に出さないように努め、他方で当局にとって都合の良い捜査情報をリークし、報道させることでマスコミをもコントロールし、「起訴=有罪」という風を吹かせ、有罪獲得に向けて猛進するという姿勢こそが諸悪の根源だったはずだ。」

私と代理人チームは、彼がここで言っているこの「諸悪の根源」を国賠審で立証しようとしています。それは法曹関係者であれば、言わずもがなの事実ですが、決して表に出ることなく、裁判所も看過してきたものです。私の国賠審では、裁判所がこの「諸悪の根源」を認定するかどうかが注目されます。

記事の中で前田氏が刑事司法改革の柱として挙げたのが下記の2点でした。

1) 取調べ室で被疑者に虚偽自白を強いることを防止し、併せて被疑者以外の全ての関係者の供述経過を逐一記録として残すことで、後日の検証に耐えるようにするという全面可視化(録音録画)制度

2) 捜査当局の手中にある全ての証拠を起訴後速やかに被告人側にオープンにし、その手の内をさらすことで、プラス・マイナスを問わず、異なった立場から複眼的な視点で謙虚に証拠を見ようという全面証拠開示制度

このあるべき刑事司法改革のイメージは、彼が検察組織から離れたからこそ、突然思い至ることができたものでしょうか。私はそうではないと思います。法務官僚、警察・検察関係者も、刑事司法改革のためになすべきことは何かを知りながら、自己権益の擁護のため、国民の利益を犠牲にして、独善的な論理に固執しているものだと強く推認します。

このあるべき刑事司法改革が、現在、法務委員会で審議されている法案では、全く骨抜きになっていることはこれまで幾度となく述べてきたところです。

1)の取調べ可視化に関しては、対象事案を刑事事件全体の3%程度(裁判員裁判対象事件及び検察独自捜査事件)に限定し、しかも捜査当局の恣意的な判断で録音録画を見送ることが可能とする例外規定が置かれています。

前田氏は、記事の中で、その録音録画の例外規定の実例を、数字を挙げて述べています。

「現に逮捕勾留された被疑者のうち、2014年度中に警察が取調べの全ての過程を録音録画した件数は、裁判員裁判対象事件全体のわずか17%にすぎない。被疑者から供述を得られにくくなるといった理由から、捜査官が全面可視化を実施しようとしなかったからだ。」

実施が義務付けられたとしても、実際の実施が17%程度であれば、原則と例外が逆転する「ザル法」になるとしか言いようがありません。

2)の全面証拠開示に関しては、法制審議会で実質的な議論は全くされませんでした(周防正行氏ほか一部委員が強く提唱したものの、警察・検察関係委員の頑強たる抵抗にあい、議論がされず、答申にも盛り込まれることはなかったものです)。

前田氏は、今法案に関し、以下のようにまとめます。

「「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の例えどおり、全体としては当初の反省から程遠い、呆れた内容のものと評価せざるを得ない。

様々な利害関係者の綱引きを背景とし、特にできるだけ現状を変えずに新たな武器だけは欲しいという警察や法務検察、これを応援する学者らのリードでまとまった法案であるものの、国会では慎重に審議が行われ、可能な限り修正が施されることを期待したい。」

衆議院の法務委員会は彼を参考人として呼ぶべきだと思います。「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」に関する意見を語らせれば、彼以上適任の人間はいないはずです。

(注1)
ここをクリック→ #検察なう (480) 「法務委員会で審議される「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(1)」

(注2)
ここをクリック→ #検察なう (460) 「愛知県弁護士会主催「3・7取調べの可視化市民集会」講演全文」

7/16/2015

















ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1

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category: 刑事司法改革への道

2015/07/16 Thu. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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