「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (482) 「法務委員会で審議される「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(2)」 7/20/2015 

#検察なう (482) 「法務委員会で審議される「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(2)」 7/20/2015

先週ブログで、7月1日開会の法務委員会の模様をお伝えしました。

ここをクリック→ #検察なう (480) 「法務委員会で審議される「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(1)」

引き続き、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」に関する法務委員会の審議をフォローします。

7月8日の法務委員会では、主に身体拘束制度・保釈及び証拠開示制度に関する審議が行われました。人質司法の是正や証拠の全面開示は、刑事司法改革でも非常に重要なテーマですが、今回法案となっている刑訴法等改正案では、全くといってもいいほど改善がされていないものです。そのため、この日の参考人意見、委員の質疑は今日の刑事司法の問題点を理解する上では、重要な議論と言えます。

リンクはこちら。
ここをクリック→ 衆議院インターネット審議中継 ビデオライブラリ 法務委員会(7月8日開会)

この日呼ばれた参考人は4人。肩書とともに法案に対するスタンスを付け加えておきます。

大澤裕   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)「賛成」
宮村啓太  (日本弁護士連合会司法改革調査室室長)「賛成(日弁連として)」
江川紹子  (ジャーナリスト)「法案は問題あり」
小池振一郎 (弁護士)「断固反対」

例によって質疑の中には、かなり興味深い議論がありました。この3時間余りの審議の中で、一番興味深いのは、最後の最後、2時間57分からの清水忠史氏(共産党、大阪4区)の質問です。質問全文を書き起こしました。

清水 「あと2分ほどなので、最後の質問になると思います。それぞれの参考人にもお伺いしたかったのですけれども、ご容赦頂き、もう一度日弁連の宮村参考人にお伺いして私の質疑を終えたいと思います。

今回、日弁連の5月22日の会長声明(注1)を見ますとですね、一番最後に「当連合会は、市民・関係者、全ての弁護士、弁護士会とともに、改革をさらに前進させるために全力を尽くす決意である。」と、このように締められておられるんですね。ところがですね、ご承知だと思いますが18弁護士会は盗聴法拡大に反対する声明(注2)を出しておりますし、つい6月もですね、横浜弁護士会が司法取引と盗聴の拡大に対して反対する会長声明(注3)を出しました。全ての弁護士、全ての弁護士会ということではないと思いますし、この証拠開示の拡充を含む刑訴法の一括改正に反対する弁護士会や弁護士は、決して少数ではないと、私は思っております。

で、何を聞きたいかと言いますとですね、宮村参考人の、一番私の心に残った言葉はですね「冤罪をなくすことがこの司法制度改革の魂だ」とおっしゃいました。だったらなぜ冤罪被害者の方々自身が反対しているこの刑訴法の一部改正案を進めようとしているのか、日弁連として冤罪被害者の方々の声を聞かれたんでしょうか。」

改正法案の叩き台である法制審議会の答申は全会一致で決裁されているため、そこでは警察・検察関係者も弁護士会関係者も同じく賛成票を投じたわけですが、この法案が、捜査権力の焼け太りだと各方面から批判されているにも関わらず、なぜ日弁連はこれを後押ししているのかやはり疑問は残ります。

冤罪被害者の方々の反対の声に関しては、私も参加した4月22日の院内集会の模様を八木啓代氏がブログに記していますので、そちらをご覧下さい。

ここをクリック→ 『八木啓代のひとりごと』 「院内集会・問題だらけの『刑事訴訟法改正案』 なぜ冤罪被害者は、反対するのか」

先の質問に対する宮村啓太弁護士の回答は、これしか言えなかったのだろうという、あくまで日弁連の公式見解とでもいうべき無難かつほとんど答えになっていないものです。

宮村弁護士は東電OL殺人事件のゴビンダ・マイナリ氏弁護団の一人であり、悪質な検察による証拠隠しがその冤罪の原因だということは重々承知しているため(注4)、自身の意見陳述では、力強く人質司法の是正や証拠の全面開示の必要性を説いていただけに、日弁連の代表として冤罪被害者の声を聞いていないと突き上げられるのは少々気の毒な気もします。

傍目には迷走ぶりのようにも映る日弁連の行動原理に関しては、以前のブログで「取調べ可視化が目的化するリスク」と書きましたが(注5)、更に重要なヒントは同日参考人として呼ばれた一人の江川紹子氏の意見陳述の中にあります。彼女は、この刑事訴訟法改正が「最初の一歩なのか、最後の一歩なのか明確ではなく、そのことが刑事司法に不信感を抱いている冤罪被害者をして不安にさせている」と述べています。

この刑事訴訟法改正が、最後の一歩であれば、微々たる成果と引き換えに司法取引と盗聴法対象事件拡大という強力な武器を捜査権力に与えたことになります。日弁連が信じているようにこれが最初の一歩であるという保証は残念ながらどこにもありません(取調べ可視化に関しては、見直しがなされるべきであると付言されるようですが)。性善説に立つ日弁連が、役者が一枚も二枚も上手の法務官僚に言いようにあしらわれていないことを切に望みます。

参考人の意見では、改正案の問題点を、冤罪をむしろ生み出すものだと指摘する小池振一郎氏の意見は重要ですが、時間のない方には、彼のブログにその超短縮エッセンスを求めることとし、やはり江川紹子氏の意見陳述をご覧下さい。

ここをクリック→ 小池振一郎氏ブログ『小池振一郎の弁護士日誌』「「可視化義務付け」法案ではない」

江川氏の指摘は、「裁判の公開、司法の透明性、国民による検証可能性という問題がなおざりになっているのではないか」という大局的な視点で、ジャーナリストらしい観察だと思います。特に、昨今、証拠の目的外使用の問題がクローズアップされ(注6)、刑事司法はこの点に関しては、前進どころがむしろ逆行しているかのように感じます。

「刑事司法は、法曹三者だけのものではなく、国民のものである」という江川氏のメッセージを是非ご覧頂ければと思います。

(注1)
ここをクリック→ 日弁連会長声明「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」の早期成立を求める会長声明

(注2)
ここをクリック→ 「通信傍受法の対象犯罪拡大に反対する18弁護士会会長共同声明」

(注3)
ここをクリック→ 横浜弁護士会 「捜査・公判協力型協議・合意制度」の導入と通信傍受法の改正に反対する会長声明

(注4)
東電OL殺人事件では、「最近になって開示された証拠のDNA鑑定を行ったところ、ゴビンダ・マイナリ氏のDNA型とは不一致であり、その時点で初めてゴビンダ氏が真犯人ではないことが分かった。冤罪の原因は、事件当時にすべきDNA鑑定を怠っていた」と情報操作されていますが、事件の当初からゴビンダ氏が犯人でない証拠(遺体の乳房に残留していた唾液の血液型)は存在しており、検察はその証拠を隠していたものです。

ここをクリック→ #検察なう (294) 「犯人血液型当てクイズ」 

(注5)
ここをクリック→ #検察なう (467) 「取調べ可視化が目的化することのリスク」

(注6)
ここをクリック→ #検察なう (301) 「証拠は誰のものか」

7/20/2015














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category: 刑事司法改革への道

2015/07/20 Mon. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

どこかの記事でこの刑事訴訟法改正案は毒饅頭じゃないかと意見がありましたが、確かに可視化と証拠開示は盗聴対象拡大や司法取引と分けるべきだったのでは、と思います。

抱き合わせとしては、あまりにデメリットばかり目立つ法案ですが、この法案になぜ周防監督が最終的に折れたか、その経緯を鑑みれば少しの前進でも将来に繋げる為にリスクを取る決断をした、という見方もできなくは有りません。

それでも日弁連としては賛成すべきでは無かったと思いますし、そう感じている弁護士は少なくないでしょう。日弁連、基本的に左翼勢力という事になりますが、余りに情けないというか、政治力が無いというか、政治センスが皆無というか、根本的に改革が必要な様に思います。

日本の弁護士で圧倒的に民事専門が多いのは、一つに今の刑事司法制度が余りに歪であり、無実と思われる被告であっても、裁判官次第では高い確率で有罪になってしまう事。ルールとして見た場合、圧倒的に被告不利を強いられるからでしょう。悔しい思いをして、今日も戦っている刑事弁護士達の思いを汲めば安易にあの改正案に賛成する等ありえんでしょう。

Tri #6Aros7K. | URL | 2015/07/20 Mon. 14:25 * edit *

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