「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (78) 「検察の最有力証拠」12/28/2011 

#検察なう (78) 「検察の最有力証拠」12/28/2011

今日、検察の作成資料がどさっと届きました。段ボール箱に一箱。しかもこれは一部で、まだあるそうです(と、コピー代を心配する私)。

関係者の検面調書を読み出して、悲しくなりました。いかに私を弁護しようとしても、あるいは完全にニュートラルでいようとしても、結局は検察の誘導で、私が悪いという印象の調書が出来上がっています。

関係者がどう思おうと、それが事実関係の実証とは全く関係ありませんが、裁判官の心証に影響を与えようという検察の姑息な作戦です。ましてや自分も株式報酬の無申告で、脛の傷がある関係者の調書なんてのはひどいもんです。

例えば、私がかつて確定申告を依頼していた税理士。彼の懈怠により無申告が数年ありました。調書では私はそれを知りながら依頼し続けていたとのこと。ずっとそんな税理士に頼み続ける人間がいるとは到底思えないのですが、これも自分の保身と検察の誘導で利害が一致したことのなせる技ということなのでしょう。直接的な証拠が何もないため、そのような事情をとにかく山ほど集めて、なんとか悪印象を作ろうというのが検察の手口です。グレーをいくら重ねても黒くはならないんですけどね。

そして、唯一といってもいい検察のもつ私にとって不利だと思われる証拠が、以前にもご説明したoption exercise formの私の記載です。手元に資料が届きましたので、ここでより詳しく解説しようと思いますが、まずその前に私の印象をお伝えします。

3年間も国税局査察部と検察特捜部が必死になって探して、これだけしか出てこないのかよというのがそれです。人の人生を台無しにしようとするからには、誰もが「あー、それなら八田は悪いことしてたんだ」というもっとまともな証拠を出せよと思ってしまいます。もし彼らが、最後は「仕事だから」と言い逃れて、間違ってたら腹を切るくらいの覚悟がないのであれば、それを恥じて国税局や検察を潔く辞めてほしいものです。それ程の責任が彼らにはあると思っています。ここまで重箱の隅をつっつく証拠(と言えるのかどうか分からないものですが)を見つけて解釈するだけの知性があれば、そのほかの山ほどある証拠から私の無実は明明白白のはずです。これが日本の最強捜査権力の姿かと思うと、本当に情けなくなります。今日、弁護士にはもう少し語気を強めて主張したのですが、ここではこの程度に納めておきます。

以降は細かくなるので、こ難しい話が苦手な人は読み飛ばして下さい。ただ裁判ではここからの議論が一番重要になると思います。

問題のoption exercise formは英文で14ページにもなる契約書の類で、実物を添付すれば、「なんじゃこりゃ?」という感覚をシェアして頂けるような代物です。

私のほ脱額と言われている3億5000万円の大部分は会社の現物株ですが、一部ストックオプションがありました。額にして6140万円です。ストックオプションとは、会社の株を決められた価格で購入できる権利です。株の場合にはただもらうだけの話ですが、ストックオプションの場合には、権利を「行使する」という私が能動的に起こすアクションがあります。それが先に述べたoption exercise formという書類の記入です。つまり「株を買うことができるってんなら、頂戴よ」と意志表示をその書面でするわけです。

その14ページの書類を記入する際、労力を最小化するために、「餅は餅屋や」と経理部の人間に電話して、「で、どう記入すりゃええねん」と聞くことは、私の性格を知る者からすれば全く不思議はないかと思います。仕事は忙しいし、私は会社では偉かったので(普段から偉そうですが、会社では実際に偉かったんです!)、シンガポールの経理部の知り合いに指示を仰ぐことは全く躊躇しませんでした。そして彼女の指示通り「はい、はい」と記入したものです。

そして問題の部分は、設問の項目に(only applicable if there is a tax withholding obligation on the exercise options)という括弧で括った但し書きがあります。私はその但し書きのついた設問自体を斜線で消しました。それはその経理部の人間の指示でしたものですが、これが私の脱税の意図ありという証拠だというのが検察の主張だと思われます。

え?何のことか全く分からない?分からないですよね。例えば、メールで私が「やべーっ!ばれちまったよ」とか、税務調査が入った段階で「うへーっ、延滞税まじやばいし」と税理士に早く税金納めるよう泣きつくとか、もっとそれらしい証拠があればいいんでしょうけれど、そんなものは初めからないわけです。で、3年間、国税局と検察は山ほどある資料をひっくり返して、先の部分を見つけたわけです。直訳すると(このオプションの行使に伴って、税金の源泉の義務が生じる場合のみは)というものです。主語がないので、今読んでもピンと来るものではありませんが、これは「会社の」ということなんだそうです。それで、「会社が源泉の義務がある場合」という条件を斜線で消した=会社に源泉の義務がないことを知っていた=自分で別途申告義務があることを知っていた、という超ウルトラCのこじつけです。

もし私が、彼女に相談せずに自分で理解して記入したのであれば、特に指示のない「斜線で設問自体を消去する」ということは全く必要のない行動です。彼女は電話口で指示をしていたため、誤記入を防ぐためにそう私に指示したのだと思います。

また彼女は、私と「話したという記憶はない」が、もし話したとすれば「必ず会社は株式報酬の源泉徴収はしていないと説明したはずだ」と主張しているとされています。それは私の記憶とは異なるものですが、「説明した」「いや、聞いてない」では埒が明きません。こんなくだらない議論が3億5000万円の脱税の故意の立証だとする検察に少し付き合ってみましょう。私が、裁判官であれば、まず彼女に聞きたいのは「なぜ、あなたはそれを説明する必要があるのですか」ということです。解説しましょう。

例の「会社は税務指導を職員に対し徹底周知していた」というやつです。彼女は、自分が会社は源泉徴収の義務がないということを知っていて、かつ職員にもその指導を徹底してやっていたのであれば、職員も彼女と同じように、「そんなことは知っている」と思う方が当然なのではないでしょうか。そうであれば、その説明を敢えて忙しい私に電話口で説明する必要もないでしょう。彼女が、その説明を必要と思うのは、「誰もそんなこと知らない」という場合です。それは自己矛盾です。

調書を読んで、私と話したことを全く思い出せないという人間が、源泉徴収をしていないという説明に関しては「絶対に」「必ず」したと明確に言ってのけるのは違和感があります。これが「検察の作文」というものです。文章を読むセンスがあれば、「あー、検察頑張っちゃったな」というのが透けて見える部分です。

さて、これを裁判所がどう評価するのかなかなか楽しみなところではあります。これまでは検察の厳しいキラーパスを受け止めてきた裁判所ですが、さすがに彼らも世の中の流れを感じとっているのではないかと期待しています。

明日は江川紹子氏とランチです。検察の在り方検討会議のメンバーでもあった論客との対話は楽しみです。

P.S.
先日、金沢に帰省した際、高校時代の同級生と会う機会がありましたが、来年で高校卒業以来30年となります。私の高校では毎5年ごとに学年の同窓会をやるので、来年はその年に当たります。振り返ってみるとこの30年はあっという間だったように思います。するとこれから30年間生きられるかどうか分かりませんが、それもあっという間なのかもしれません。そう考えると人生は本当に短いものだなと思います。その人生を自分に恥じることなく、良心に従って生きてこれたことは本当によかったと思います。

と、思っていたら、先日突然大量の下血をしました。拭く紙が真っ赤、トイレボールも赤くなるほどです。2日ほどそれが続き、「えー、まじかよ。もしや大腸がん?」なんてことも考えました。しかし、自分には余り思い残すところはないことに気付きました。突っ走ったかな、と。もし今死んだら、有罪であろうが無罪であろうが、結果を知らずにいることになるこの裁判だけが心残りだと思ったくらいなものです。複数の医療関係者の友人に相談したところ、彼らの意見は全て「痔でしょ」でした。どうもそのようです。ま、誰しも死をリアルに感じることはいいシュミレーションです。是非お試し下さい。

12/28/2011


category: クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

2011/12/28 Wed. 10:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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