「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (489) 「恵庭OL殺人事件再検証 (4) ~アリバイ」 8/13/2015 

#検察なう (489) 「恵庭OL殺人事件再検証 (4) ~アリバイ」 8/13/2015

恵庭OL殺人事件の冤罪被害者大越美奈子さんのアリバイは、完全に成立しています。

争いのない事実は、大越さんが事件当日午後11時30分43秒にガソリンスタンド(ガソリンキング恵庭店)に入店した様子がビデオに写っていたことです。

そして犯人はこの午後11時30分の時点では、まだ遺体の焼却現場に立ち止まっていたと考えられます。それは目撃者の証言から、遺体の焼却は11時15分頃から開始され、燃料が追加投入され大きくなった炎が数度、最後は午前0時5分頃目撃されているからです。

ガソリンスタンドに立ち寄る前に大型書店で立ち読みや文具を見ていた大越さんを、遺体の焼却されていた時間にガソリンスタンドから約13.8km離れた遺体の焼却現場にいたとする検察の主張と裁判所の判断は無理に無理を重ねるものでした。

まず遺体の焼却開始時間の目撃証言を10分早めて11時5分頃に変えさせ、犯人は「殺人及び死体損壊の嫌疑が自分に迫ることを免れるため可及的速やかに現場から離れたい」という心理状態であったため、遺体焼却開始後ただちに現場を離れたとし、遺体焼却開始時間後に目撃された2台の車は、犯人ではなく「ゴミを燃やしているのだろう」とする見物人であり、3月の夜中の北海道であっても道路は全行程乾燥しており、街灯の少ないあるいは全くない無舗装の道であっても事故を起こすリスクなど考えもせず法定速度を大きく越える速度で走行してガソリンスタンドに辿り着いたというものです。そして、現場不在証明を不成立とする最も重要な主張が、前回までのブログで紹介した、遺体の脂肪が独立燃焼することにより燃焼の途中でも炎が大きくなりえるというものです。

検察の主張通り、もし犯人が現場を11時10分頃に立ち去ったとしても、弁護側鑑定人中辻隆氏(北海道大学教授、土木・交通工学、注)の走行実験では、20分を越える時間が必要であり、アリバイは成立すると弁護団はその鑑定書を再審請求の新証拠として提出しています。ところが裁判官は、燃焼実験の結果同様、この科学鑑定も「ぶっ飛ばせば20分以内で到達することは可能」と、「素人の常識」で一蹴しています。

事件翌日の現場付近の捜索の様子(2000年3月17日撮影)

現場付近 2000年3月17日撮影

(路面が凍結している様子が伺えます)

そもそも、遺体を焼却した犯人がその直後に現場近くでのんきにガソリンを給油するという発想自体常軌を逸していると感じますが、法廷というところは我々の一般常識を大きく逸脱した主張や判断が平然となされることは、私も自分の経験から知っていることなので、さして驚くことではありません。

アリバイに関して最も需要な二つの証拠は、大越さんがガソリンスタンドに入店した模様を録画したビデオと、散歩の前後及び途中で炎の様子を目撃した目撃証言です。そしてその両方の証拠とも検察により公判に提出されることなく一旦は隠蔽され、前者は第一審有罪判決後の控訴審で開示され、後者は有罪確定後の再審請求審になって初めて開示されたものです。

なぜ検察は、これらの証拠を公判に提出することなく隠蔽したのでしょうか。それは、これらの証拠を提出すればアリバイが成立し、大越さんの無罪が立証されるということを彼らが十分に理解していたからにほかなりません。

つまり、これら証拠の内容を精査するまでもなく、検察がそれらを隠蔽していたということだけをもってして、大越さんのアリバイは成立していると考えていいと言えます。

以下は、特別抗告申立書のアリバイに関する部分の冒頭に書かれた文章です。

「請求人に関するアリバイの成否は、確定第一審以来激しく争われてきた、本件における最大の争点の一つである。そして、現段階で明らかになった全ての証拠を総合して考察すれば、請求人のアリバイが成立することは明らかである。弁護人は、現段階で裁判所に提出されている証拠が確定審段階で全て取り調べられていれば、あの確定審裁判官であったとしても、請求人に有罪判決を言い渡すことはなかったであろうと考え、無念の思いに駆られている。」

郵便不正事件では、検察による証拠捏造が大問題となり、世間の批判が集中したことは記憶に新しいところですが、無実を示す証拠の存在を知りながら、有罪立証の妨げになるからと証拠を隠蔽する行為は、証拠捏造と何ら変わらない犯罪行為です。そしてそれが現在日本の刑事司法では当然のように行われているという実情を、我々は周知する必要があると思います。

ここでは、再審請求審の段階で明らかになった目撃証言に関する内容を特別抗告申立書から引用します。

「Hは、本件死体焼損現場から約558メートルの南方にある自宅から、飼い犬を散歩させるため外出した際、本件死体焼損現場方向に燃え上がる大きな炎を目撃した重要証人であった。しかし、先に述べたとおり、画定審では、捜査段階で作成された調書のごく一部(捜査の最終段階で作成された検察官調書だけ)しか開示されていなかった。

ところが、原原審(引用者注:再審請求審)裁判長の訴訟指揮に基づいて開示された同人の初期供述の結果、次の諸事実が明らかになった。すなわち、

①  同人は、事件翌日の事情聴取の段階で、「午後11時15分頃に納屋の間口と同じくらいの大きさと形の大きな炎を見たとして、それは「太陽が地平線に落ちるときのようなオレンジ色」であった旨、極めて印象的な目撃供述をしていたこと、

②  その後警察官が目撃位置の特定をするための引き当たりをした際には、その約8分後である午後11時23分頃、最初の炎の3分の1くらいの大きさの炎を見た旨供述していたこと、

③  また、午後11時42分頃、最初に見た時と同じくらいの大きさの炎を、さらに、翌17日午前零時5分頃、自宅から最初の炎の3分の1くらいの炎を見た旨供述していたこと

が明らかになった。

このように、Hは、最初に炎を目撃した午後11時15分ころだけでなく、その後約1時間にもわたって、大きな炎を何度も目撃した旨具体的に供述していた事実が明らかになったのである。これは、犯人が、死体に着火した後も現場に止まり続け、燃料を補給しながら念入りに死体を焼損した事実をきわめて有力に示唆するものである。そして、その想定は、本件死体が完全焼損に近い状態であった事実ともよく符合する。これらの事実によって、午後11時30分頃にガソリンキングにいたことが確実な請求人に完全・完璧なアリバイが成立する筈である。」

新証拠によってアリバイが成立することが立証されても、「疑わしきは確定判決の利益に」という裁判所の論理で再審請求は棄却され、冤罪被害者の救済がなされることはないというのが日本の刑事司法の厳しい現実です。

次回以降のブログで、この事件の再検証の最後として、プロファイリングにより真犯人像に迫ってみたいと思います。

(注)
中辻隆氏
研究に「凍結路面状態における交通渋滞と旅行時間の動的予測手法に関する研究」等あり。
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8/13/2015

















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category: 恵庭OL殺人事件

2015/08/13 Thu. 07:03 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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