「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (502) 「盗聴法対象事件拡大のリスク~衆議院法務員会における山下幸夫参考人の意見より」 9/28/2015 

#検察なう (502) 「盗聴法対象事件拡大のリスク~衆議院法務員会における山下幸夫参考人の意見より」 9/28/2015

自分の電話が盗み聞きされていれば、不快に思わない人はいないのではないでしょうか。それがたとえ警察によって盗み聞かれ、自分に全くやましいところがなかったとしても、そうした気持ちは起こる方が普通でしょう。

ジョージ・オーウェルの『1984年』は政府(ビッグ・ブラザー)による監視の恐怖を描いたものですが、それが絵空事にならない可能性が今日の日本でもあり得ると感じさせるのが刑事司法改革法案に盛り込まれた盗聴法改正です。

盗聴法の正式名称は「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」。傍受の対象となるのは、電話(固定電話・携帯電話)のみならず電子メールやFAXも通信に含まれます。また傍受の方法は、通信線に傍受装置を接続して行う「ワイヤータッピング」です(通信装置を介さない会話を直接盗聴する「バッギング」は含まれません)。

現行法において、通信傍受による捜査が許容される対象犯罪は、「通信傍受が必要不可欠な組織犯罪」、具体的には薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航及び組織的に行われた殺人の捜査についてのみに限定されています。それを一般犯罪まで拡大しようとする改悪が、今回の刑事司法改革法案に盛り込まれています。

この改革法案は、先頃閉会した通常国会の参議院での審議が先送りとなり、11月上旬から開かれる予定の秋の臨時国会で継続審議される予定です。

この改革法案は、既に衆議院で可決されていますが、本会議の審議に先立つ法務委員会で審議され、盗聴法の対象事件拡大についても議論されました。その際、参考人として呼ばれた山下幸夫弁護士の原稿が、救援連絡センター発行『救援』に掲載されていたので、それを引用させて頂きます。

彼の発言は、衆議院インターネット審議中継のアーカイブで見ることができます。

ここをクリック→ 2015年7月29日法務委員会

「盗聴法改悪に強く反対する」

盗聴法(通信傍受法)改正案を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」は、衆議院法務委員会で、与党が民主党、維新の党との修正協議を経て、本年8月5日に多数決により可決され、8月7日に衆議院本会議でも可決されて衆議院本会議でも可決されて、参議院に回付された。8月21日に参議院本会議で審議入りしたが、本稿執筆現在、参議院法務委員会での審議には入っておらず、本国会での成立が阻止できる可能性が出てきている。

私は、今回の法案の中でも最も問題が大きいのは盗聴法(通信傍受法)の改正案であると思う。それは、1999年の通常国会で、あれだけ多くの国民や野党の反対の中で、与党自身が大幅な修正をして縛りをかけることでようやく成立した法律を、警察のやりたいように縛りをはずそうとするものであるからであり、今回の法案が成立したら、今後、警察のやりたいように何度でも改正されて監視社会化が一気に進むと懸念されるからである。

今回は、本年7月29日の衆議院法務委員会で、参考人として呼ばれて話した意見を紹介することで、その問題点を伝えることにしたい。

「私が弁護士になって10年目の平成11年の通常国会において通信傍受法の政府案が国会で審議されましたが、当時、私は、大変に問題の多い法案であるとしてこの法案に反対していました。国民世論や野党からも強い反対があり、結局、当時の与党の公明党の主導により大幅に修正されて通信傍受法の現行法が成立し、翌平成12年に施行されました。通信傍受の実施状況の推移を見ても、最近は、ほぼ年間10件程度しか実施されていない状況です。すなわち、通信傍受法は、当初の政府案に大きな縛りをかけ、捜査機関にとって非常に使いづらい法律になったことが分かります。

今回の法案の元になった法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会は、大阪地方検察庁特別捜査部が立件した厚生労働省元局長無罪事件などを受けて設けられた「検察の在り方検討会議」を経て、検察官に過度に取調べや供述調書に依存する風潮があったことを改めるべく設置されたものであり、当時、検察だけでなく、警察においても選挙違反事件に関するいわゆる志布志事件などの冤罪事件が明らかになっている中で、捜査機関全体の問題として、冤罪防止のために、いかに捜査機関による権限を抑制し、自白獲得型の捜査を根本的に見直すかが求められていたはずでした。

ところが、特別部会においては、通信傍受法を、いかに使い勝手の良い法律にする方向での議論がなされました。作業分科会の議論では、通信傍受という捜査手法が有用か必要かという観点から対象犯罪の拡大が議論されました。

その結果、捜査機関の捜査権限を大幅に拡大するものとなり、特別部会の当初の目的とは正反対の方向のとりまとめになってしまったと考えられます。

今回の法案は、当初の政府案に戻ろうとしていると考えられます。すなわち、現行法が成立する際にこれにかけていた縛りを完全にはずそうとするものです。その意味で、本改正案は現行法を質的に転換するものであり、これを認めると、今後も通信傍受を拡大していくことがとめられなくなると考えられます。

以下、本法案に即して、具体的に指摘させていただきます。

まず、対象犯罪の拡大についてです。現行法は、①薬物犯罪、②銃器犯罪、③集団密航、④組織的殺人の4類型だけを対象犯罪としています。これらは、性質上、組織犯罪といえるものでした。本改正案は、財政犯である窃盗・強盗、詐欺・恐喝を加えるとともに、殺人、傷害、傷害致死、現住建造物等放火、爆発物使用などの殺傷犯、逮捕・監禁、略取・誘拐、児童ポルノの提供罪等のそれ自体組織犯罪ではない一般犯罪を対象としようとしています。そのため、これらを別表第二の犯罪として、いわゆる組織性の要件を傍受令状の要件として要求しています。

しかし、その要件は、組織犯罪処罰法の組織性の要件と比較すると緩和されています。これは特別部会での議論の中での妥協の産物として認められた経緯があり、要件としては極めて不十分であり、十分な歯止めにはならないと考えられます。

対象犯罪がこれだけ広く拡大されると、これまで年間10件程度であった通信傍受は、年間数百件に増えるおそれがあると考えられます。

また、今回、対象犯罪を決めるに当たっては、捜査にとって通信傍受が有用か必要かという基準によったことから、今回の法案が成立した後も、捜査当局からは事あるごとに、通信傍受が有用・必要という理由で通信傍受の対象犯罪が拡大していくことが強く懸念されます。

特別部会においては、いわゆる振り込め詐欺や窃盗団を対象とすることが議論されていましたが、それならば、組織犯罪処罰法にある組織的詐欺を対象にしたり、新たに組織的窃盗罪を新設するなどし、それを対象犯罪にすることも考えられたのに、詐欺罪や窃盗罪、さらには恐喝罪・強盗罪を対象犯罪としており、一般犯罪の共犯事件についても通信傍受が可能になるおそれがあります。

次に、通信傍受手続の合理化・効率化についてです。これは、まさに、捜査機関にとって使い勝手の良い制度にするためのものであり、捜査機関がやりたかった捜査手法だと考えられます。

本改正案は、現行法が認める方式に加えて、通信事業者の施設で行う一時的保存方式、特定電子計算機を用いて捜査機関の施設で行うリアルタイム方式と一時的保存方式の3つの方式を可能にしようとしています。

このうち、特に問題の多いのは、捜査機関の施設で行う方法です。この場合には、暗号化等を行う機能を有する特定電子計算機を利用して、通信事業者の施設から捜査機関の施設に、対象となる通信を暗号化して伝送し、これを捜査機関の施設で復号化して伝送し、スポット傍受を行うというものですが、立会人による立会いや原記録の封印は不要となります。現行法上の通信傍受は、全国で一箇所とされる通信事業者の施設に、捜査官が出向き、立会人をあらかじめ全て準備しなければ実施できないという点で、極めてハードルが高い捜査手法でした。それ故に実施件数も少なかったと考えられますが、この方式によると、先程の対象犯罪の拡大と相俟って、通信傍受の実施は飛躍的に増え、無関係な市民の通話が聞かれる頻度が高くなると考えられます。

現行法の立会人は、通信内容を聞くこともできず、切断権も認められていないために、外形的チェックを行うものとされてきました。これは、元々、現行法自体が、立会人の権限を限定したことに問題があったと考えられます。現行法ができる前に検証許可状を使って電話傍受した事案についての最高裁平成11年12月16日第三小法廷決定は、立会人に電話を聴取して切断する権利を認めていた事案であることに留意する必要があります。ただ、現行法によっても、立会人がいることによって、捜査機関が無関係通信を傍受するなどの濫用をしないことを抑制する効果があったと考えられます。そして、これは、通信傍受が憲法違反にならないための要件の一つをなしていると考えられます。

そうであるとしたら、本改正案が、捜査機関の内部で第三者の立会人がいない状態で通信傍受を実施することについては、その公正さに疑問を持たざるを得ません。

政府は、暗号化する機能を有する特定電子計算機を用いることを立会人の不要の理由として説明していますが、暗号化は伝送の際に情報が漏洩しないための措置であり、傍受手続の現場での外形的チェックに変わるものではありません。ちなみに、伝送による漏洩の危険は暗号が絶対に破れない訳ではないことから、専用回線によることが望ましいとしても莫大な予算が必要となります。

したがって、少なくとも、特定電子計算機の技術的措置の適正性等を、第三者が随時に抜き打ち的に監査を実施することは最低限不可欠であると考えられますし、現行法上認められた傍受記録に記録された通信の当事者に与えられた不服申立てがほとんど利用されていない現状において、捜査機関の施設において立会人のいない状態で通信傍受が行われるようになるのであれば、第三者機関が裁判所に保管された原記録の全て又はアトランダムに聴取して事後的チェックを行う制度は不可欠というべきです。

その他、本改正案には極めて問題が多く、このままで成立させるべきではないと考えます。国会による良識ある審議を期待して、私の意見を終わります。」

今通常国会でこの法案の成立に反対の声を挙げ続けたい。

弁護士 山下幸夫 (2015年8月31日記)

9/28/2015














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category: 刑事司法改革への道

2015/09/28 Mon. 00:35 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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