「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (510) 「東住吉放火殺人事件に思うこと Part2」 10/26/2015 

#検察なう (510) 「東住吉放火殺人事件に思うこと Part2」 10/26/2015

東住吉放火殺人事件について思うことを書いてみます。Part2の前篇であるブログを書いたのは2012年3月のことですから、それから既に3年半が経過しています。

ここをクリック→ #検察なう (112) 「東住吉放火殺人事件に思うこと」

実に長い時間(勿論、事件からは更に長い長い時間)が経過していますが、その間、実の娘を殺したとされた青木惠子氏や、その出自から依然罵詈雑言を浴びせられている朴龍ひろ氏、そして更に彼ら家族はさぞかし辛く悔しかったことだろうと思います。

事件は火の気のない場所での火災がきっかけになっています。そして入浴中の小6女児が、不幸にもその火災で命を落としました。

火災そのものには事件性(=放火)の可能性があると、捜査機関が推定したことは当然のことだと思います。実際に起こったであろう、駐車中の車のガソリンキャップからガソリンが漏れ出したことなど、誰が想像し得たでしょうか。

女児の死とその火災に関連があるのかどうか、それが事件と事故の見極めの分かれ目でした。

火の気のないところでの火災と女児の死を結び付ける想像力は、時には、犯罪を見出すことにもつながる捜査機関の重要な能力だと思います。そうした「嗅覚」を私は個人的には高く評価します。

そしてその見極め、筋立ての元に被疑者に自白を求めるというのは「残念ながら」今日の事件捜査では、至極当然のことです。

「残念ながら」と敢えて述べたのは、それが間違いであったと後講釈で批難することは簡単ですが、自白偏重主義の日本の刑事司法においては、それが最も有効な捜査手段と認められているからです。

今後、この事件が冤罪と明らかにされた時の議論として、なぜ虚偽自白が起こったかが問題とされるでしょうが、問題にすべきは、なぜ虚偽自白がなされたかではなく、もう一歩進んで、虚偽自白は回避できないという前提で、自白を偏重することの問題意識を持つ必要があります。

この事件の捜査においては、青木氏と朴氏の自白が取れた時点で、警察は大手柄だったと思われます。それは事故を偽装した保険金殺人という憎むべき犯罪を見出すことができたと思われたからです。いかに暴力的、高圧的な取調べがあったにせよ、あるいはなかったかにせよ(取調べ可視化がなされていない以上、それは永遠に闇の中です)、取調官は、冤罪と分かっていながら、シロと分かっていながら虚偽自白を強要したという可能性はゼロであるということを理解すべきです(注)。

彼らは、(物的裏付けがなかったにせよ)真正、彼ら二人を保険金殺人の犯人だと思って、「正義」のために取調べを行ったのだと私は信じています。憎むべき犯罪を摘発すべく、誠意と熱意を持って取調べを行った結果、虚偽自白が生まれたということは重要視されるべき事実です。

そしてこの冤罪が裁判所によって明らかにされたのは、科学実験によってアナザ―ストーリーが認められたからではないことも重要です。

科学実験は、火災が自然発火である可能性を示しましたが、それだけでは裁判所は動かなかったであろうと思われます。それが、日本の刑事司法の限界です。つまり、「疑わしきは罰せず」では無罪はありえないということです。科学実験により、朴氏の自白通りの犯行様態は不可能であるという、無罪の立証責任が依然弁護側には課されているということが、日本の刑事司法の問題点として依然挙げられるものです。

もう一度言います。この事件では、「自然発火という可能性がある」という疑わしきは罰せずという刑事司法の大原則に基づいてのみでは無罪とは成りえず、「自白通りの犯行様態は科学的に不可能である」という無罪立証がなされたことにより、ようやく再審開始(=事実上、無罪判決)が実現したということです。

この事件に関する私の以前のブログにも、冤罪説を否定するコメントは多く書き込まれています。それに対するリアクションとして、この「Yahoo!知恵袋」の回答は相当イカしています。

「貴方のお部屋で再現実験したら如何でしょうか」

ここをクリック→ Yahoo!知恵袋 「東住吉放火殺害事件、なんで冤罪にされたのですか」

この事件が冤罪であることが立証できたのは、幸運にも警察・検察の捜査官がガソリン燃焼に関する知識がなかったためです。もし捜査官にガソリン燃焼に関する科学的知識(密閉された車庫でガソリンを撒けば、車庫そのものが爆弾となる)があり、「朴氏は、(7.3リットルではなく)1リットル程度の少量のガソリンに着火して放火を図った」という自供を取ったなら、この冤罪は発覚しない完全犯罪ならぬ「完全冤罪」であったということは銘記すべき点です。

この事件の経緯を見ても、明らかにされた冤罪は氷山の一角であり、解明されていない冤罪の暗数は相当なものであると思われます。冤罪が国家の犯す絶対悪であることは、議論の余地がないことです。そしてその「国家の絶対悪」を減らすために、我々国民ができることは何かを日々意識する必要があるのではないでしょうか。日々とは言わないまでも、こうした事件が注目されたこの時だけでも。一緒に冤罪のない社会を目指しましょう。是非お願いします。

弁護団の再現実験に関しては、『季刊 刑事弁護 第71号』に詳説記事が掲載されています。
ここをクリック→ 『季刊 刑事弁護 第71号』特集「使おう!科学的証拠」事例報告 燃焼再現実験 東住吉事件

百聞は一見にしかず。テレ朝『ザ・スクープ』による再現実験を見て、あなたが裁判員だとして有罪を言い渡すことができますでしょうか。また、少なからずの人が疑問を持った「なぜ子供にそれだけの生命保険を掛けていたか」にも、担当保険外交員が直接取材に答えています。
ここをクリック→ 『ザ・スクープ』「「ママは犯人じゃない~火災実験が語る“放火殺人”の真相~」

(注)
その点では、捜査の早い段階からゴビンダさんが犯人ではないという証拠(遺体の乳房に付着していたゴビンダさんの血液型=B型とは違う血液型=O型の唾液)がありながら、それを隠して冤罪を作った東電OL殺人事件や、やはり捜査の早い段階で大越美奈子さんのアリバイが成立することが分かっていながら、それを示す証拠を隠して冤罪を作った恵庭OL殺人事件とは異なると言えます。

但し、この時点では検察も青木さんや朴さんが犯人ではない、そして事件そのものがないことは重々知っているはずで、この期に及んでの刑の執行停止に対する異議申立、再審開始決定に対する異議申立は犯罪行為以外の何物でもないものです。

東電OL殺人事件→ 
ここをクリック→ #検察なう (294) 「犯人血液型当てクイズ」

恵庭OL殺人事件→
ここをクリック→ #検察なう (489) 「恵庭OL殺人事件再検証 (4) ~アリバイ」

10/26/2015


















ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

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category: 冤罪事件に関して

2015/10/26 Mon. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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事実適法な裁判を受けたとする証拠がない

事実適法な裁判を受けたとする証拠がない
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suihanmuzai #1S0t/Q7o | URL | 2015/10/27 Tue. 17:50 * edit *

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