「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (516) 「埼玉愛犬家連続殺人事件(3)~山崎氏供述の信用性」 11/19/2015 

#検察なう (516) 「埼玉愛犬家連続殺人事件(3)~山崎氏供述の信用性」 11/19/2015

これまでのブログで述べたように、山崎永幸氏が供述をする経緯には、その信用性を疑問視するだけの重大な問題があるように伺えます。

ここをクリック→ #検察なう (513) 「埼玉愛犬家連続殺人事件(2)~山崎永幸氏供述の経緯」

裁判官はこうした事情を知りながらも、なぜ山崎氏の供述を信じるに至ったか。勿論、検察の主張を追認しただけという可能性もあります。彼の供述がなければ、事件全体の立件自体怪しくなるという事情から、「闇司法取引」を暗黙したという可能性もあるでしょう。

しかし私が考えるのは、裁判官は、山崎氏が殺害に関与したとするには共犯者3人の中で一番動機が弱いと考えたのだと思います。殺害の動機が弱い=虚偽供述の可能性が低いと考えたということです。

山崎氏の警察や検察での取調べの態度、あるいはその後の公判での態度を見ると、とても『冷たい熱帯魚』で吹越満氏が演じたような気弱な人物でないことは明らかです。彼自身(あるいはゴーストライター)の書いた事件に関する本の中でも、「死体遺棄は脅かされ、恐怖の中で手伝ってしまった」と書かれていますが、彼の人物像を伺い知る限りそれはないだろうと感じます。

そうであればこそ、山崎氏が殺害に関与したとなると、能動的な動機が必要であり、それは考えにくいと裁判官が考えたからこそ、彼の供述を採用したのだと思われます。

殺人の動機には一般的に、怨恨、金銭目的、愉快犯とありますが、関根元死刑囚、風間博子死刑囚には、金銭目的の動機が考えられるものの、山崎氏が殺しを手伝った報酬を受け取った形跡がなかったことから(勿論、怨恨や愉快犯でもないことから)、動機がないと考えたものだと思います。これが私にとって事件が不可解である一つの大きな要素です。

山崎氏の供述の概要は、彼自身の名前で書かれた本や、内容の全く同じであるゴーストライターが書いた本で伺うことができます(但し、後に公判で否定した箇所あり)。それらは、一読して一般人ではなく文章を書くことに手慣れた人間によって書かれた文章であることが分かります。そしてそのディテールがかなりフィクション交じりであると感じざるを得ないのは、それがあまりにも非現実的だからです。

(死体損壊に際し)「博子はTシャツと派手な花柄のスパッツに着替えていた。普段は地味な格好をしている博子だが、水商売の女でも履かないような派手なラメ入りのサンダルを履いている」「その時、久しぶりに博子の声を聞いた。正確に言うと、それは鼻歌だった。まな板の上で忙しく人肉を刻みながら、博子は鼻歌を歌っていた」(『悪魔を憐れむ歌』より)

勿論、殺人者の心理は常人には伺い知れないものがあるにしろ、普段全く地味な格好の風間死刑囚が、死体損壊の際してのみ「花柄のスパッツ、ラメ入りのサンダル」に着替えるなどや、人肉を刻みながら鼻歌を歌うなどということは、ドラマ性を高めるため筆が滑ったとしか考えられないものです。

それと比較してこちらはどうでしょうか。

「車を走らせていたところ、関根と山崎が「掛かったか。」などと言いながら和久井の首に紐のような物を掛けて、二人で何度も「せえの。」などと声を掛けながら引っ張り合っていた。」(風間博子供述)

裁判所は、第三の殺人である和久井奨氏(遠藤安亘氏の運転手、関根死刑囚や山崎氏は彼の名前すら知らず「あんちゃんこ」と呼んでいた)殺害に関する風間博子死刑囚の証言を、「人を殺害する際に「せえの。」などと声を掛けることはゲーム的であり真実味に欠ける」と排除しています。勿論、結論ありきの詭弁なのでしょうが、事件の資料を読んでいて、この対比は興味深く感じました。

また、「死体遺棄は脅かされ、恐怖の中で手伝ってしまった」ということに対する違和感は、それほど恐れていたのであれば、なぜ警察に通報しなかったのだろうかということに尽きます。

山崎氏は、第一の殺人である川崎明男氏殺害の後、川崎氏の車の処分を関根死刑囚から指示されます。彼は、群馬県片品村の遺体損壊現場から一人で埼玉県熊谷市に向かい、そこで川崎氏の車に乗り換えた後、武蔵丘陵森林公園の駐車場で風間死刑囚と待ち合わせるまでやはり一人で運転しています。その間、逃げるチャンスがあったのに、なぜ山崎氏は警察に逃げ込まなかったか。

また、なぜ関根死刑囚は殺害を目撃されながら、山崎氏に車の処分を一人で行かせたか、その際に警察に通報されるという危惧はなかったのかという疑問が起こります。

それは連続した第二、第三の殺人の後、遠藤氏と和久井氏の遺体を片品村へ運ぶ際にも言えることです。遺体を積んだ車で遠藤氏宅から犬舎まで同乗したのは、関根死刑囚・風間死刑囚と山崎氏ですが、犬舎で車をもう一台拾った後、分乗したのは、関根死刑囚・風間死刑囚の二人が一台に、そして山崎氏一人がもう一台にというものでした。もし関根死刑囚が山崎氏を疑っており、脅かす必要があるのであれば、彼は山崎氏と同乗したはずです。

その道中、山崎氏が沼田インターチェンジで降りようとしたところ、検問を見て、とっさに逃げ、そのことによりその後関根死刑囚の信頼を得ることになったとしていますが、その前から関根死刑囚は山崎氏を信頼していたのではないかと考えられます。

その沼田インターチェンジの料金所手前で、検問を見て急旋回し折り返した後の叙述です。

「あのまま沼田インターで下りていれば、恐らく事件はそこで終わっていたはずだ。それなのに、どうして俺は検問を避けたりしたのだろう?裁判所でも散々訊かれたが、うまく答えることができなかった。正直に言えば、この時、俺は何も考えていなかったのだと思う。なぜ逃げたのか?高速隊員の姿が見えたからだ。そうとしか言いようがない。それは一つの条件反射だ。」(『悪魔を憐れむ歌』より)

この本の中でも一番不合理だと感じる部分です。このように山崎バージョンの(それは即ち捜査当局バージョンの)事件の様相ですが、かなり虚構に満ちていることが推認されます。

その山崎氏が、風間死刑囚の公判に証人として呼ばれ、衝撃的な証言をします。それについて次回以降のブログで取り上げたいと思います。

参考文献
『冤罪File』第20号「冤罪疑惑が黙殺され続けた「埼玉愛犬家連続殺人事件」共犯者が被告人の無罪を証言!」 片岡健

『冤罪File』第21号「埼玉愛犬家連続殺人事件 女性死刑囚の子供たちが、知られざる事件の内幕を明かす!「それでも母はやっていない」」 片岡健

『女性死刑囚』 深笛義也

『悪魔を憐れむ歌』 蓮見圭一

ブログ『横板に雨垂れ』
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『大きな愛に包まれて 無実を訴える死刑確定囚 風間博子の声』
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11/19/2015

























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category: 埼玉愛犬家連続殺人事件

2015/11/19 Thu. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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