「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (519) 「埼玉愛犬家連続殺人事件 (6) ~ 風間博子死刑囚の無罪性の検証(2)」 12/3/2015 

#検察なう (519) 「埼玉愛犬家連続殺人事件 (6) ~ 風間博子死刑囚の無罪性の検証(2)」 12/3/2015

前回ブログでは、風間死刑囚が関与したとされる第一の殺人に関し、彼女の無罪性を検証しました。

ここをクリック→ #検察なう (518) 「埼玉愛犬家連続殺人事件 (5) ~ 風間博子死刑囚の無罪性の検証(1)」

今回のブログでは、彼女が関与したとされる連続する第二・第三の殺人に関し、彼女の無罪性を検証します。

第二・第三の殺人の犠牲となったのは、関根元(はじめ)死刑囚の用心棒とでも言うべき稲川系高田組組長代行遠藤安亘氏と、その運転手であった和久井奨氏です。遠藤氏は、第一の殺人の川崎氏殺害に気付き、関根死刑囚を強請っていたところ、最後は殺されてしまったものです。

この第二・第三の殺人に関して、判決で採用されたところの山崎氏の供述と、風間死刑囚の供述は大きく食い違っています。それらを並べてみます(以下、敬称略。と書いたところで「死刑囚」が敬称であるのかよく分からんと気付きました)。

<山崎バージョン>

1993年7月21日の夜。山崎は運転手を務め、関根の車が修理中だったため代車のトヨタ・カリーナバンで関根と風間を遠藤宅へ送った。関根と風間が遠藤宅へ入って行くのを、山崎は車の中から見送った。

30分ほどして、遠藤の付き人の和久井が家から出てきて、県道方向に走って行った。風間が出てきて、「代行の具合が悪くなって、救急車を呼んだ」と言う。和久井は救急車を迎えるために行ったのかと、山崎は思う。

続いて出てきた関根は、車を出せ、と山崎に言う。愛人を呼べと遠藤が言っているのだという。戻ってきた和久井が助手席に座り、後ろに関根と風間が乗り、山崎は車を走らせた。しばらくして、和久井が腹を押さえて、「病院に連れて行ってくれ」と呻き始める。和久井は唸りながら、ダッシュボードに足を乗せた。苦しみで脚を突っ張り、ミシッという音とともに、フロントガラスの二ヶ所にヒビが入り、みるみる蜘蛛の巣のように亀裂が広がる。

和久井が動かなくなると、関根と風間は、彼を引きずり出し、荷台に押し込んだ。体の上に、毛布を掛ける。

車は遠藤宅に戻った。3人が入っていくと、遠藤は一階の居間で、仰向けに大の字になって絶命している。3人がかりで遠藤を運び、車の荷台に押し込む。

そして彼らは埼玉県熊谷市万吉にある犬舎に寄り、駐車場に停めてあった風間のマツダ・クレフに分乗した。遺体を積んだカリーナバンに乗ったのは関根と風間、山崎はクレフを運転し、その後遺体を解体することになる群馬県片品村の山崎の家に向かった。

<風間バージョン>

1993年7月21日。午後6時半頃、関根と山崎がペットショップに来た。「遠藤んちに行ってるから、10時頃迎えに来てくれ」と関根が風間に言った。

午後10時半頃、遠藤宅前の路上にクレフを停車し、玄関から「こんばんわ」と声を掛けると、「おう入れよ」と遠藤に呼ばれ、風間は部屋に上がった。遠藤はソファに、関根と山崎は床に座り、和久井は立って動き回っている。

5分ほどして、「気持ち悪い」と遠藤が言って、ソファの背にもたれかかった。関根と和久井が「代行、大丈夫ですか」と声を掛ける。風間の知るところではなかったが、すでに硝酸ストリキニーネを飲まされていたのだ。

1、2分して和久井が玄関から外に出ていき、山崎も続いて出ていく。後で分かったことだが、山崎は、近くに停めたカリーナバンを取りに行ったのだ。遠藤が「水をくれ」と言うと、関根はコップに水を汲んで渡した。

遠藤が落ち着いたようなので、ヤクザの家に長居したくないと思い、「車の中で待っている」と言い置いて、風間はクレフに戻った。

5分くらいすると対向車が来たので、すれ違えるようにと、風間はクレフを動かした。その車はカリーナバンで、見ると運転しているのは山崎だった。山崎は、車を遠藤宅前に停める。

山崎が車で来ているのなら、帰りの足はあるのだから、自分は帰っていい、と風間は思った。関根にそれを伝えようと遠藤宅前に戻ると、関根と山崎が重そうなものを運びながら、出てきた。上には毛布が掛かっている。手伝おうと、荷物の下の真ん中あたりに手を入れると、人の尻と背中の感触があり、風間は「人間の体だ、死体だ」と思った。

カリーナバンの荷台にそれを積み終えると、関根に「おまえが運転しろ」と言われ、わけも分からず、「ハイ」と言って、風間は運転席に乗った。助手席には、背もたれを半分くらい倒して、和久井が寝ているような感じで横たわっている。和久井に続いて外に出た山崎が和久井を拾ったのだろう。関根に車を出せと言われて、風間は車を走らせる。

和久井は「気持ちが悪いから医者に行ってくれ」と言い、「すぐ行くから待っててね」と風間は答えた。

暗い道に入ったところで、3人がバタバタと動き出したので、風間は車を停めようとした。関根が「停めるな」と怒鳴ったので、そのまま車を走らせる。関根の「かかったか」、山崎の「うん」という声がし、「せーの」と2人の声が合わさった。和久井は全身が突っ張るように伸び、脚がダッシュボードの上に乗っかった。突っ張った脚で、フロントガラスに蜘蛛の巣状にひびが広がっていく。風間が見ると、和久井の首にはロープのようなものがかかっていた。

和久井の死体を荷台に移し、遠藤宅に戻った。風間のクレフを拾うためである。「後についてこい」と山崎が言ってクレフに乗り、風間はカリーナバンを運転して片品村に向かった。
(以上)

この2人の供述で大きく食い違っているのは何でしょうか。勿論、風間死刑囚が殺害に関与しているかどうか、殺害方法など重要な相違点がありますが、そのほかに「遠藤氏・和久井氏殺害時に、遠藤氏宅前に車はカリーナバンの1台だけだったか、それともクレフと2台あったか」という点が挙げられます。

それがなぜ重要かと言えば、「殺害時車は1台であり、犬舎にもう1台車を取りに行った」ということは全く不合理だからです。犬舎に向かうまで、カリーナバンに2人の死体を積み、3人が乗っているわけですから、そのまま片品村に向かえばいいだけです。わざわざ犬舎に寄って、もう1台の車を拾う必然性は全くありません。

なぜ不合理にももう1台の車を拾うというストーリーにせざるを得なかったのでしょうか。それは、片品村に向かったのは2台であり、真実は「遠藤宅前から、最初から2台だった」ということだと思われます。

それを裏付ける重要な証拠が、警察官による行動確認捜査日誌です。当時警察は、関根死刑囚に第一の川崎氏殺害の疑いをかけ、万吉にあった犬舎を監視していました。事件当日、2人の捜査官による視認が行われていたのは、午後2時47分から午後11時20分まで。

山崎氏の供述では、遠藤氏宅から、午後11時15分頃、カリーナバンで犬舎に戻り、クレフに分乗したとなっています。捜査官は、犯行現場から戻ってきたカリーナバンを見ることはありませんでした。もしそれがわずかな時間の差で、捜査官が引き揚げた後だったとしても、更に重要なことは、捜査官はその日、犬舎の駐車場にクレフがあったという事実を一度も確認していないことです。もし山崎氏供述が正しければ、昼頃からずっと駐車場にクレフがあったはずにもかかわらず。

風間死刑囚の供述では、当日の昼間、クレフは犬舎の駐車場ではなく、ペットショップの駐車場に停めていました。そして夜に一旦クレフで自宅に戻った後、遠藤氏宅に向かったとしています。それであれば、捜査官が犬舎の駐車場でクレフを見ていないとしても何ら不思議はありません。

この事実を争う重要部分について、判決では以下のようになっています。

「当日の万吉犬舎に対する監視は、概ね万吉犬舎から離れた定点から被告人らに気付かれないようにしつつ行われていたのであって、犬舎周辺の空き地等も含め隈無く監視しそこに生起ないし存在した事象の全てを把握しかつこれを右日誌に記載していたとはいい難い」

つまりクレフが視認されていないのは、捜査官の見落としだとしているのです。

行動確認捜査日誌には、人物の出入りの記載に伴って、服の縞模様やヒゲ、メガネなどの細かなことまで書き込まれています。それでいて、クレフを見落としていたというのはあまりにも不自然です。

事件当時、約120メートルの距離にある監視地点から、犬舎駐車場までは田畑ばかりで、見晴しはよかったとされています。風間死刑囚による再審請求に際し、新証拠として提出されたのは、航空写真や動画によって、犬舎駐車場周辺がどれだけ見通しのよい場所にあったかということを実証するDVDでした。

それでも結論ありきで、捜査官の見落としという主張を裁判所は固持するのでしょうか。今後の展開に注目したいと思います。

参考文献
『冤罪File』第20号「冤罪疑惑が黙殺され続けた「埼玉愛犬家連続殺人事件」共犯者が被告人の無罪を証言!」 片岡健

『冤罪File』第21号「埼玉愛犬家連続殺人事件 女性死刑囚の子供たちが、知られざる事件の内幕を明かす!「それでも母はやっていない」」 片岡健

『女性死刑囚』 深笛義也

『悪魔を憐れむ歌』 蓮見圭一

ブログ『横板に雨垂れ』
ここをクリック→ ブログ『横板に雨垂れ』

『大きな愛に包まれて 無実を訴える死刑確定囚 風間博子の声』
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12/3/2015














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category: 埼玉愛犬家連続殺人事件

2015/12/03 Thu. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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