「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (524) 「大崎事件の真相に迫る (3) ~ 被害者死因について」 12/24/2015 

#検察なう (524) 「大崎事件の真相に迫る (3) ~ 被害者死因について」 12/24/2015

大崎事件の最大のポイントは、被害者の四男中村邦夫氏の死亡が他殺であるかどうか、そして死因が何かという点です。裁判所の認定では、彼は原口アヤ子さんの指示の下、長兄善三氏、次兄喜作氏により絞殺されたとされました。

確定判決の犯行様態は以下の通りです(敬称略)。

「アヤ子が「これで締めんや」と言って西洋タオルを善三に渡すとともに、仰向きに寝かせた邦夫の両足を両手で押さえつけ、喜作もまた、邦夫の上に馬乗りになってその両手を押さえつけ、善三において、西洋タオルを邦夫の頚部に1回巻いて交差させた上、アヤ子の「もっと力を入れんないかんぞ」との言葉に、両手でその両端を力一杯引いて締めつけ、よって、同人を窒息させて殺害した。」

この殺害の事実認定は、善三氏、喜作氏の自白を基礎としています。殺害方法も彼らの自白に基づくものです。彼らは、捜査段階の自白を自らの公判では否認することなく、刑にも服しましたが、アヤ子さんの再審請求審において証人として出廷した際、自白は虚偽であり、事件には一切関与していない旨証言しました。

善三氏、喜作氏には知的・精神的障害があり、捜査段階で獲得された自白の信用性には大きな疑問があります。

殺害方法は当初、「扼殺」(手で首を絞める)と思われていながら、善三氏、喜作氏の供述における殺害方法が「絞殺」であったことから、鑑定は「死因は頚部に外力が作用したことによる窒息死であり絞殺と矛盾しない」とされました。その鑑定をした城哲男鹿児島大医学部教授は、後にその鑑定が誤りであったことを認め、「頚椎前面の組織間出血はタオルによる絞殺では形成されない」と明言し,また「被害者が自転車ごと側溝に転落していたことは知らなかった」と述べています。

被害者の死体に、絞殺であれば認められるはずの索状痕がなかったことから、裁判所による鑑定解釈は、常に索状痕を生じさせない絞殺の可能性にバイアスがかかっており(例えば、「タオルのような幅の広い索状物では索溝を残さないケースもある」としたり「全く抵抗できないほどに身体を拘束すれば、あるいは被害者が全く抵抗しなければ、必ず索溝が形成されるとまでは言い難い」としたり)、かなり迷走しています。

この結論ありき的な裁判所の非科学的とも言える科学鑑定の解釈に引導を渡すのが、現在継続中の第三次再審請求において弁護側が新証拠として提出した吉田謙一東京医科大教授の法医学鑑定です。吉田鑑定は、「被害者の死体に死斑・血液就下が認められないことは、急性窒息死とは矛盾する」と指摘しています。死斑とは、血液就下により表皮から血液の色が確認できるようになったものを指しますが、「急性心臓病、窒息、脳出血などで死亡した場合、死斑は強く出現する」(Wikipedia「死斑」)とされています。死体写真のネガが再審請求に際して証拠開示されましたが、それからのより鮮明な画像の検証によって導き出されたものです。

死斑が生じにくい死因の一つとしては、失血死が挙げられます。それは邦夫氏が自転車で側溝に転落した際に、大量の内部出血を伴う致命的損傷を被ったことを意味しています。検死では、肋骨の骨折や大腿部に大きな打撲傷があったことが調べられていますが、その部位の開検まではされませんでした。吉田鑑定により邦夫氏の死因は、他殺ではなく事故死であることが決定的に明らかになったと言えます。

死体が遺棄されていたことから、その死は他殺とされ、初見で疑われた急性窒息死という見立てに沿って「絞殺」という自白が取られたことがこの冤罪の始まりでした。

弁護団事務局長の鴨志田弁護士は次のように述べます。

「冤罪を生む原因のひとつに「ジャンクサイエンス」が挙げられていることはご存じだと思います。大崎事件の冤罪被害者たちも「ジャンクサイエンス」の犠牲者なのです。」

ここをクリック→ #検察なう (522) 「大崎事件の真相に迫る(1) ~大崎事件の概要」

ここをクリック→ #検察なう (523) 「大崎事件の真相に迫る(2) ~大崎事件の複雑性」

参考文献
鹿児島大学『法学論集』「再審の現在―大崎事件第三次再審請求で問われるもの―」中島宏
法学セミナー2012年3月号「大崎事件―つづら折りの事件史あるいは奮闘記」鴨志田祐美
法学セミナー2014年12月号「大崎事件第2次再審請求から見た刑事司法の課題」鴨志田祐美

12/24/2015










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category: 大崎事件

2015/12/24 Thu. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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