「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (529) 「鹿児島強姦事件で逆転無罪判決が確定~捜査権力により作られる冤罪の実相」 1/28/2016 

#検察なう (529) 「鹿児島強姦事件で逆転無罪判決が確定~捜査権力により作られる冤罪の実相」 1/28/2016

性的犯罪事案で、一審有罪が控訴審で逆転無罪となるケースは本当に稀有です。平成24年2月13日の最高裁判例(注1)以降、そもそも控訴審で一審判決が逆転することが抑制的になっている上に、性的犯罪事案の場合、どうしても被害者女性に肩入れするケースが多いからです。

2012年10月に起こった事件に関し、14年2月の一審判決は懲役4年の実刑、それが今月12日の控訴審判決で逆転無罪となり、26日の上告期限に福岡高検が上告を断念して無罪が確定したものです。

事件の概要は以下の通り。

鹿児島市で2012年、当時17歳だった女性に暴行したとして強姦罪に問われた当時23歳の男性の控訴審判決で、福岡高裁宮崎支部(岡田信裁判長)は12日、懲役4年の実刑判決とした一審鹿児島地裁判決(14年2月)を破棄し、逆転無罪を言い渡した。

控訴審で新たに行われたDNA型鑑定で、女性の体内に残された精液から被告人とは別人の型が検出されたことが判明。高裁宮崎支部は昨年3月に被告を保釈しており、判決が注目されていた。

被告人は12年10月7日午前2時過ぎ、鹿児島市内の繁華街で女性に声をかけ、近くの路地に連れ込んで暴行したとして、逮捕・起訴された。

捜査段階から一貫して「酒に酔っていて記憶がない」と無罪を主張して、弁護側も「『暴行された』とする女性の証言に信用性がない」と訴えていた。

最大の焦点は、女性の体内に残された精液のDNA型鑑定の結果だった。

捜査段階で行われた鹿児島県警の鑑定は「精液は確認されたが抽出されたDNAが微量で型の鑑定はできなかった」との結果で、一審判決はこれを事実上、被告人の精液と位置づけて有罪判決を導いた。

ところが、控訴審で行われた日本大学の押田茂實名誉教授(法医学)による再鑑定では、「簡単に」(押田名誉教授)DNAが抽出され、被告人と異なる第三者の型と判明。しかも、女性が当日はいていたショートパンツから検出された第三者の型とも一致した。

これを受け、高裁宮崎支部は昨年3月、被告人を保釈した。弁護側はこの再鑑定を踏まえ「一審の誤りは明らかだ」と主張。

さらに(1)女性の証言通りなら、アスファルトの上で服を脱がせて暴行したことになるが、女性はけがを全くしておらず常識的に考えて不可能(2)被告人は酩酊状態で「自転車に乗りながら女性の腕をつかみ、強引に約200メートル離れた現場まで連れて行った」とする女性の証言も不自然などと訴えていた。

控訴審では、検察側も新たに別の大学教授にDNA型鑑定を依頼し、「被告の関与を裏付ける結果が出た」として証拠採用を求めたが、高裁宮崎支部が退けた。

さらに、捜査段階の鑑定を担当した県警技術職員が数値などを書き留めたメモを廃棄したことが明らかになっている。

検察側は女性の胸の唾液のような付着物から被告人のDNA型が検出されていることから「女性の証言に信用性はある」と反論していた。

事件を解説したテレビ報道の動画はこちらです。

ここをクリック→ 辛抱さんが解説 これはひどい!「強姦罪 逆転無罪 DNA再鑑定で別人」記憶がない人を警察が犯人に仕立て上げる 朝刊早読みニュース

有罪ありきの捜査権力の違法捜査を断罪した高裁裁判体の判示は賞賛に値するものだと思いますが、これが高裁裁判体も一審裁判体のように、捜査権力の判断を追認するだけの「木偶の坊」であったとしたら(そしてその可能性は決して低くない)、実に恐ろしいことです。

この事件の最大の問題点は、科学鑑定の危険性にあります。

女性の乳房に唾液、膣内に精液の存在が確認され、その唾液(想像するに相当少量)から被告人のDNA型を検出できた科捜研(科学捜査研究所)が、膣内の精液からは「抽出したDNAが微量であったため型が判定できない」と主張するのはそもそも不合理です。そして、鑑定できていたことを検察も知っていたことは、控訴審で検察が再鑑定を実施し、その鑑定結果を証拠調請求した(裁判所は採用せず)事実からも明らかです。

それを、捜査機関の証拠捏造とせず、「鑑定技術が未熟」としたのは、裁判所の捜査権力に対する最大限の配慮だったと感じます。

防御権の観点から、科学鑑定は無罪立証には積極的に活用されるべきものですが(アメリカのイノセンス・プロジェクト=DNA型鑑定によって冤罪証明を行う非営利活動機関の例を挙げるまでもなく)、有罪立証には抑制的であるべきだと考えます。

そして科学鑑定は、再鑑定を担保しなければ、有罪立証に用いることはできないという法的なしばりが必要だとも考えます。

「DNA型鑑定をした結果、被告人の型が検出された。ちなみに資料は全量消費して、再鑑定はできない」とされてしまったら、弁護のしようがないからです。

DNA型鑑定は、ファジーな事実認定と異なり、裁判官にはシロクロはっきりとした証拠として受けがよいように感じますが、今回のケースのように、捜査権力の恣意的な活用によって、逆手に取ることもできるということは肝に銘じておくべきだと思います。

捜査権力もこの武器を最大限利用するために、現在は大学研究所に外部委託しているDNA型鑑定を今後は科捜研で独占的にする方向であることが報じられていますが(2014年11月6日朝日新聞、注2)、とんでもないことだと思います。

科学鑑定は、公平な立場の第三者が行うべきであり、有罪立証の証拠作りとしてされるものでないのは言うまでもないことです。

この事件に関する江川紹子氏の論稿も合わせてお読み下さい。
ここをクリック→ [鹿児島・強姦事件、逆転無罪] またも繰り返された冤罪 裁判所・捜査当局の「罪」

(注1)
ここをクリック→ #検察なう (318) 「「チョコレート缶事件」と論理則・経験則違背」

(注2)
ここをクリック→ 「「詭弁なんだが」 DNA検査の委託中止へ 警察庁「経費減」、独占懸念も」

1/28/2016












ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

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category: 冤罪事件に関して

2016/01/28 Thu. 10:07 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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