「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (530) 「映画『ふたりの死刑囚』と『袴田巌 夢の間の世の中』」 2/6/2016 

#検察なう (530) 「映画『ふたりの死刑囚』と『袴田巌 夢の間の世の中』」 2/6/2016

最近、冤罪がらみの映画を二本続けて観る機会がありました。一本は袴田巌氏と奥西勝氏を描いた『ふたりの死刑囚』、もう一本は袴田巌氏の最近の状況を映し出した『袴田巌 夢の間の世の中』です。

ふたりの死刑囚

『ふたりの死刑囚』は、直球、しかも剛速球のストレートでした。袴田事件の冤罪被害者袴田巌氏と、名張毒ぶどう酒事件の冤罪被害者奥西勝氏を扱ったドキュメンタリー映画です。

二人とも依然再審叶わず死刑囚という身分で一人は生きながら釈放され、一人は獄死しています。二人の死刑囚を対比してより浮き彫りにされるのは、奥西勝氏の獄死だと感じました。名張毒ぶどう酒事件を追い続けている東海テレビ制作であればこそ、そうした意図もあったと思われます。

奥西氏には一旦、再審開始が決定されながらも、検察の異議申立を受け入れ、裁判所が開始決定を取り消す(名古屋高裁)という不正義が行われました。袴田氏の再審開始決定(静岡地裁)には、その反省もあったのではと、深読みします。それに対して、袴田氏の再審開始決定に、真実の追求を捨てて、有罪にすることが自分たちの仕事と言わんばかりの検察の姿勢には、全く反省、進歩がないと感じます。

映画を観て感じたことは、二人の死刑囚には未だ再審がなされていないという事態は、過去の過ちを反省しないという捜査権力、司法当局の姿勢を表しています。それは単に過去のことだけではなく、その姿勢が今も冤罪を生み続けているということです。

また映画を観て、再審請求は親族しかできないということを初めて知りました。帝銀事件が紹介され、平沢貞通死刑囚の獄死以降も再審請求を続けるため、彼の生前、支援者の方が養子縁組をしました。名張毒ぶどう酒事件弁護団も長期戦の構えで、若手弁護士を育成していることも映画で描かれていましたが、奥西氏の死後に再審請求を引き継いだ彼の妹の岡美代子氏も高齢ゆえ、再審請求の「後継者問題」は由々しいとも感じました。

映画の中で、市川寛氏が「良証拠主義」に解説を加えていました。

「有利な証拠と不利な証拠、すべてを見ているのは検察。自分たちは有罪だと信じて起訴するわけだから、裁判所にも有罪と信じてもらうのが検察の務めであるというポリシーがある。裁判所が判断に迷うような余計なものは出さない」

この言葉に、検察がなぜ被告人に有利な証拠を隠すのかの本質を見たような気がしました。

ここをクリック→ 『ふたりの死刑囚』予告編

『二人の死刑囚』を剛速球とすれば、『袴田巌 夢の間の世の中』はチェンジアップです。

この映画には、映画ファンとして正直期待していませんでした。金聖雄監督は、以前にも、冤罪関連の映画として狭山事件を扱った『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』がありますが、それがあまり映画として面白くなかったからです。

彼の作品は、実在の人物の普通の生活を切り取るドキュメンタリーですが、石川一雄氏夫妻の日常が、あまりに日常であり、時々裁判所の前で抗議活動をする「非日常」を挿入しても、そこから彼が経験した冤罪という過酷な状況がそれほどにじみ出ているとは感じられなかったからです。

ところが『袴田巌 夢の間の世の中』は、自分の予想を大きく裏切る味わい深い作品でした。

映画製作サイドのうまさがランクアップしたこともあると思われますが(特に、袴田氏の獄中からの手紙の引用の仕方や音楽の使い方など)、何よりもキャラ立ちした袴田巌氏と姉の秀子氏の存在は大きいと言えます。特に、主役の巌氏を完全に食った感のある秀子氏の存在感が、この映画を映画として面白くしていると感じました。

映画は説明的ではなく、袴田巌氏の奇妙な言動にも解説を加えず淡々と描く作風です。部屋の中をぐるぐる歩く姿は、拘禁反応による障害だとは分かっても、例えば彼が時折見せる「ピース、オッケー、ピース」のハンドサインは宇宙との交信をしているであるとか、うちわを常に手放さないのは拘禁反応の障害の影響であるとか、ジャンケンでもパーしか出せないとか、そうした説明は一切ありません。

彼の奇妙な言動が観客席の笑いを誘うシーンも多々ありましたが、私は正直笑うことはできませんでした。それが苛酷な仕打ちの結果だからです。それを思い知ったのは、映画の中に登場した桜井昌司氏の言葉でした。彼は29年間の投獄生活の一部を、袴田巌氏と同じ東京拘置所で過ごしていますが、死刑執行が朝に告げられることから、その時間が過ぎるまで東拘全体が水を打ったように静かになるそうです。そうした毎日を死刑囚として送ってきた袴田巌氏のストレスがまざまざと心に迫る一瞬でした。

それに対し、超然とした秀子氏の言動には思わず笑わされることも度々ありました。離婚後、独り身で月一度の弟への面会を遠方から欠かさず、彼の無実を信じて支える秀子氏のタフさとそのポジティブさには、頭が下がる思いです。

事件を知らない人の入門としては、事件の説明がほとんどないため、物足りない部分はあるかもしれませんが、ある程度のバックグラウンドの知識があれば、映画として楽しめる良質の作品だと感じました。

ここをクリック→ 『袴田巌 夢の間の世の中』予告編

2/6/2016








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表紙1


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category: 袴田事件

2016/02/06 Sat. 09:28 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

思うに、何故に大島裁判長はDNA鑑定に弁護側を外したのか、それはDNA鑑定は不可能とされた場合は、唯一の有罪証拠である袴田検事面前調書は、検察の捏造とする認定をして再審開始となる。

或いは再審開始決定を覆す鑑定結果がでた場合は、弁護側の反論から判断して、鑑定での白黒を外す、どの道に再審開始となる、この重大冤罪事件に我が偽造検事面前調書は、検察の証拠の捏造を証明する画期的な存在となる。

一審判決文は、死刑判決を出す根拠にとぼしい、およそ日本語としても支離滅裂の文章だった。提出された袴田さんの供述調書四五通のうち、証拠として採用されたのは、たった一通だけである。
しかし他の四四通の内容と異なった特別の内容があったわけではない。即ちこの一通の自白調書を採用した論理的根拠は何もなかった。

袴田再審事件はこうなる
http://www.suihanmuzai.com/index4/161002.jpg.html

遂犯無罪 #1S0t/Q7o | URL | 2016/10/01 Sat. 20:07 * edit *

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