「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (533) 「美濃加茂市長事件控訴審で異例の展開 ~ 「証人テスト」とはどういったものか」 2/25/2016 

#検察なう (533) 「美濃加茂市長事件控訴審で異例の展開 ~ 「証人テスト」とはどういったものか」 2/25/2016

注目の美濃加茂市長事件控訴審が異例の展開となっています。昨年8月に行われた控訴審初公判で検察官請求の証人尋問が採用され、一回結審とはならなかったことは以前にブログで書いたところです。

ここをクリック→ #検察なう (493) 「美濃加茂市長事件控訴審で1回結審ならず」

そこで採用された検察官請求の証人とは、取調べを行った警察官と検察官でした。異例の展開とは、裁判官が「私たちも別の証人を呼びたいと思ってるんですがね」と言い出したことです。それは第一審で、検察側証人であった贈賄者です。

裁判官は憲法で以下に定められているように、彼らの「職権」を行使することができます。

「全て裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」(憲法第76条3項)

裁判官が証人尋問を主導したことがなぜ異例かということを理解するには、「当事者主義」を理解する必要があります。裁判においては、事案の解明や証拠の提出に関する主導権を当事者(即ち検察官や被告人・弁護人)に委ねる「当事者主義」が取られています。つまり、確かに裁判官の職権は憲法で認められているものの、実際上の運用では、彼らはあくまで局外のレフリーに徹して、自ら積極的に事案の解明や証拠の追求をするものではないということです(裁判官にそれらを認めるものを「当事者主義」に対して「職権主義」と呼びます)。

なぜこのような展開になり、それをどう解釈すべきかについては、ヤメ検の落合洋司弁護士とヤメ判の木谷明弁護士のコメントを引用しつつ、的確にまとめた江川紹子氏の次のブログをご参照下さい。

ここをクリック→ Yahoo!ニュース「高裁が職権で最重要証人を尋問へ~美濃加茂市長の事件で異例の展開」

ここでは、一般になじみが薄い「証人テスト」についてそれがどういったものであったかを私の経験を交えて説明させて頂きます。

刑事裁判公判が盛り上がる場面は何と言っても証人尋問であり、そのクライマックスが被告人質問です。

証人は検察側ないし弁護側のいずれかが証人請求し、その請求が裁判官に認められると公判で尋問が行われることになります。そして請求した側と認められた証人が事前に打ち合わせをすることを「証人テスト」と呼び、それは一般に認められています。つまり検察側請求の証人は、証人尋問において検察官が何を聞くか、逆に弁護側請求の証人は、証人尋問において弁護人が何を聞くかということは事前に分かっており、答えを用意しているということになります。

なぜそういったことが認められているかというと、刑事訴訟規則に次のように定められているからです。

「証人の尋問を請求した検察官又は弁護人は、証人その他の関係者に事実を確かめる等の方法によって、適切な尋問をすることができるように準備しなければならない」(刑事訴訟規則191条の3)

限られた時間内にスムーズに記憶を喚起させ、要点を押さえた回答をするには、それなりの準備が必要であることは言うまでのないことです。例えば、私の被告人質問は3回の公判に亘って、計10時間行われましたが、そのうち4時間は弁護人の質問で、弁護人との問答に関しては、あらかじめ原稿ができ上がっていました。

問題はその原稿をいかに作るかということです。例えば、私の場合、弁護人の質問をまず弁護団が作成し、それに対する答えは全て私が用意しました。打ち合わせの段階で、その答えを弁護団が手直ししたり、あるいは聞いて欲しい質問を私が追加したり、随分と擦り合わせを繰り返しましたが、結局、答えるのは自分であるため、被告人質問の答えは、私が自分の言葉で、自分の考えを書いたものを原稿として用意しました。私の被告人質問から3年半経過した今となっても、同じ趣旨の答えをすることに何の問題もありません。言い回しを考えることでもたつく場合もあるでしょうが、最終的には同じ回答はできるものです。つまり「限られた時間内にスムーズに答えるための準備をする」というのが証人テストの意義です。

裁判官もそうした証人テストが行われていることは、重々承知しているため、証人が用意できない反対尋問(検察側証人に対する弁護人及び弁護側証人に対する検察側の尋問)や、裁判官が自ら聞く補充尋問とに齟齬がないかを注目しているものです。

しかしその原稿が、答えも他人が100%用意した「台本」であったとしたらどうでしょうか。その場合、「台本」を頭に入れた直後であれば、問題なくその台本通りの受け答えができたとしても、その「台本」の読み合わせから時間が経過してしまえば、全く違う受け答えをする可能性が出てくることは明らかです。

今回、美濃加茂市長事件での証言で、一審の際に検察側証人であった贈賄側の証人が新たに尋問をされるという事態で、検察側証人であった者が証人になるのであれば、当然有利に考えるべき検察が、躍起になって記憶の「鍛え直し」にこだわっていることが何を意味するかは明らかだと思われます。

以前のブログで、証人テストの問題点とその対抗策を弁護人の立場で書いています。合わせてお読み頂ければ幸いです。

ここをクリック→ #検察なう (362) 「検察「証人テスト」の問題点と対抗策」 

また、こちらは前田恒彦氏の証人テストに関する記事です。

ここをクリック→ Yahoo!ニュース「美濃加茂市長無罪判決でも問題とされた 検察が刑事裁判で行っている「証人テスト」って、どんなもの?」

真実は必ず正しい者に味方することが期待されてしかるべきです。その期待を裁判所は往々にして裏切ってきましたが、この村山浩昭裁判長の訴訟指揮にはその期待を懸けてもいいと感じさせます。依然、注目の美濃加茂市長事件です。

2/25/2016











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category: 美濃加茂市長事件

2016/02/25 Thu. 07:46 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

2001年2月、虚偽告訴人二名を提訴した裁判の判決から、半年後に初めて証拠調請求書が渡された、これで全てが理解できた。

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司法の崩壊 #1S0t/Q7o | URL | 2016/02/25 Thu. 19:56 * edit *

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