「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その14 「被告人質問の心得」 

無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その14 「被告人質問の心得」

刑事裁判の公判におけるクライマックスが被告人質問です。調書至上主義と批判されることの多い刑事裁判ですが、建前は「口頭主義」であり、裁判官はあなたの言葉を聞いてみたいと思っているはずです(そうした希望を持つことも心構えとして重要です)。

あまりテクニカルなことにこだわる必要はなく、そのためにプロフェッショナルのセコンドとして弁護人がいます。それでも知っておけば、弁護人の負担を軽くすることもあることかもしれません。基本的事項を挙げます。

あなたの発言のみが証拠となり、質問者の質問は証拠にはなりません。つまりあなたがクローズド・クエスチョン(「はい」「いいえ」で答える質問。例えば、「あなたは~と言いましたか」)で聞かれることはなく、必ずオープン・クエスチョン(例えば、「あなたは何と言いましたか」)で聞かれるはずです。「はい」「いいえ」で終わらないようにしましょう。

証言内容は速記官(注)が速記し訴訟記録となります。裁判官は後からその文章を読み返して判決を書くことになります。文章にした時に理解しづらい指示語や誤記のおそれのある単語は、極力避けたいものです。

そうしたテクニカルなことよりも重要なことを述べます。それは誰のための、何のための被告人質問かを常に意識することです。その答えは、「裁判官のための被告人質問であり、彼らに何が真実かを伝える努力をするための被告人質問」だということです。

伝えるべきは事実です。あなたの意見や評価ではありません。裁判官が真実に到達するための鍵となる事実を伝える努力をする場が被告人質問です。

被告人質問は質問する主体によって、主質問(弁護人がする質問)、反対質問(検察官がする質問)、補充質問(裁判官がする質問)に分かれます。その全てにおいて、先に述べたことが該当します。

例えば、検察官がする質問に答える場合でも、検察官に対して答えたり、彼らを納得させたりする必要はありません。起訴前の取調べでは、誠心誠意、彼らに真実を知ってもらう努力を惜しまず説得すべきです(注2)。しかし、一旦起訴された後においては、検察に遠慮する必要は全くありません。彼らは、無辜のあなたを無実の罪に陥れようとする邪悪な存在です。しかも、それを仕事としている哀しい人たちです。しかし、裁判官とは「お仲間」です。検察官とあなたのやり取りを裁判官はどのような感情で聞いているか、意識を裁判官に集中して考えれば、自ずとあなたの取るべき態度は決まると思われます。

主質問では、質問するのはあなたの最大の味方である弁護人です。主質問の内容を弁護人と十分にすり合わせる必要があると私は考えます(そう思わない弁護人もいるかもしれません。弁護人を選ぶのはあなたです。依頼した以上、弁護方針については、納得した上で人生の決戦に臨むべきです)。あなたの供述調書は、裁判における最有力の証拠でありながら、あなたに不利なことしか書かれていないと思った方がよいでしょう。優秀な捜査官は、有罪の証拠となる調書を作るよう訓練されています。被告人質問が、あなたにとって有利な主張をする最大のチャンスです。

被告人質問の主質問は、あなたの陳述で置き換えてもいいものですが、それを弁護人と問答形式で主張することの意味は、めりはりをつけることにあります。私の被告人質問では、主質問は4時間に及びましたが、もし私が4時間滔々と陳述をすれば、それを最後まで聞く辛抱強い人はいないでしょう。

一問一答の意義について、尋問についての古典である『事実審理』(岸森一/横川敏雄)(注3)の一節を引用します。

「ただ形式に問答を区切るだけのことを意味するのではない。発問の順序の工夫と合わせて、短い時間で、簡潔な、要点をついた答えを引き出し、一コマ一コマずつ事件の映像を裁判官の心のカメラにピタリとやきつかせることである。ピンボケや手ブレがあってはならない」

その共同作業を弁護人と共にするのが主質問です。何か事をするに当たって、ぶっつけ本番でやる方が良い結果が期待できるか、十分に戦略を立てて、緻密なアプローチをする方が良い結果が期待できるか、弁護人と相談すべきだと感じます。

主質問や反対質問で、裁判官を意識するというのは、例えばこのような例でイメージするといいかもしれません。

あなたはセミナーのプレゼンターです。あなたのプレゼンテーションが終わって、オーディエンスの一人から質問が出ました。あなたはどのような意識でその質問に答えるでしょうか。もしあなたが、その質問者と一対一で答えようとするなら、ほかのオーディエンスはすぐに興味を失って、その時間はほかのオーディエンスにとって無駄になってしまいます。もしあなたが、その質問者はほかのオーディエンスを代表して、みんなが聞きたいであろう質問をしてくれたという意識であれば、その質問を引き取って、みんなに対して説明しようとするでしょう。この「ほかのオーディエンス」が裁判官です。

あるいは、こういう例でもいいかもしれません。あなたは役者です。舞台の上で繰り広げられているのは、あなたを登場人物とするドラマですが、ほかの役者とのやり取りをしながらでも、必ずその意識は観客席にいる観客に向いているはずです。その「観客」が裁判官です。

被告人質問はあなたの人生の大舞台になることでしょう。それを乗り切るには、気合です。そしてその気合は必ず人の心を動かします。しかし、その瞬間にも、必ず第三者的に冷静に自分を見つめるクールな自分を忘れないようにしましょう。そうすれば裁判官のハートをつかむことができるはずです。希望を持って臨んで下さい。

(注1)
ここをクリック→ #検察なう (153) 「裁判所速記官」

(注2)
ここをクリック→ 無罪を勝ち得るために~冤罪と戦う方法 その8 「検察を敵視すべきか~起訴の見極め」

(注3)
ここをクリック→ Amazon 『事実審理』岸森一/横川敏雄著(有斐閣、1983)
















ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

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2016/02/29 Mon. 01:21 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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